【調子が悪いからこそ括れる腹】
そういう意味では南アフリカW杯の時には徹底的にできることとできないことをはっきりと分けた。直前の壮行試合でうまくいかず腹を括らざるを得ない状況に追い込まれたことで、やりたいことは捨て、できることを徹底してやり続けて得たベスト16。泥臭くもピッチ上の全員のベクトルは一致していた。それに比べれば、今回とてもじゃないがピッチもベンチも同じベクトルであったようには見えなかった。
全く同じとは言えないしこじつけ例であることは重々承知だが、他競技でも調子が悪いことが好結果となった話はいくつもある。96−97のNBAファイナル、マイケル・ジョーダンが体調不良でフラフラながらも驚異的な活躍で勝利を掴んだ試合。松坂大輔が西武時代に、球が走っている時に打たれ、調子がイマイチなときに丁寧に投げて勝つ試合はよく目にした。単純な話、調子がよくないときこそ、できることとできないことを見極めてうまくいくこともある、ということだ。もちろん調子がよくて見極められる方が遥かにいいに決まっているが、調子が良すぎて間違いを起こしてしまうことは誰にでも度々起こってしまう。
野球続きになってしまうが、MLBで活躍する田中将大やダルビッシュ有らのピッチングを見ていると、このあたりの駆け引きの上手さが素晴らしく、自身の調子や相手を見極めて、調子がよくない時もよくないなりに駆け引きして勝つ試合を度々目にする。
【できることとできないことの整理から】
コートジボワールもギリシャもコロンビアも、できないことは無理にやろうとしなかった。多少振り回されても球際で負けず、耐えてカウンターに持ち込めれば、といった印象で何も難しいことはやっているようには見えなかった。もちろん大雑把なまとめだが、自分たちの形をよりも相手の形や良さを出させないこと優先するほうが相手を苦しまることになるのならば、それも立派な戦術である。駆け引きはだからこそ面白い。
個人的には必然の失敗だったと見ているが、要因はひとつに絞り切ることは難しい。複数の要因が増幅して機能不全に陥ることもあれば一つの要因が全てをおじゃんにすることもある。が、それでも根本にあるように思えるのはやはり「値踏み」の失敗だったと見ている。マンチェスターの空気を吸っても、ミラノの空気を吸ってもそれだけで強く、上手くなることはない。皮肉でこじつけでもあるのだが、モイーズの失敗もかなり近いものがあるように見えた。
新しい代表監督のもと、まずはできること、できないこと、目指すものの現実的な整理を個人とチームできっちり行わなければならないだろう。その上で出来ることや、目指すものは最大化し、出来ないことは認めた上できっちり捨てるか相手につけこまれないように誤魔化す。基本中の基本だ。これまでの試合にも決勝トーナメントにも数多くのヒントとエッセンスが落ちているはずである。デル・ボスケやプランデッリですら結果が出せていない中、ある意味でしょうがないこともあるが、そのしょうがないを二度と起こさないために学ぶべきところは山ほどある。まだまだ発展途上の真っ最中。一歩一歩踏み固めて進むしか無い。
筆者名:db7
プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
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