~経営陣の交代とチームの崩壊~

ところがである。現在のメンバーを見れば分かる通り、前の項で名前をあげた選手は今や一人たりとも残っていない。

メンバーが大きく変わってしまった理由の一つは、経営陣の転換にある。

元々ウェスタンシドニーはリーグが主導して作られたものであり、そしてオーナーはオーストラリアサッカー連盟が務めていた。

しかし、もちろんそのような状況を長く続けるわけにはいかない。民間の人物にクラブを移管する必要があり、2014年初頭からその交渉が行われ、6月に新たな経営陣が就任した。

(新オーナーとなったポール・リーダラー氏)

だがその間に選手たちとの契約交渉は遅れ、アーロン・ムーイはメルボルン・シティへからの誘いを受託し、ユスフ・ヘルシも早くに退団を明言し、パース・グローリーへ。小野伸二はこの時点で既に札幌への移籍を決めていた。

ジェローム・ポレンツはマーケットの初日にノルウェーへの移籍を決めた後、先日ライバルのブリスベン・ロアに加入するという皮肉な状況に。そして、アダム・ダパッツォは契約条件で合意に至らずチームを離れていった。

つまり、ウェスタンシドニーは「守備を機能させていた攻撃陣」がことごとく抜けてしまったのである。

前線に残ったマーク・ブリッジ、ブレンダン・シャンタラブ、トミ・ユリッチ、そしてサイドバック兼任のシャノン・コールはゲームを作れる選手ではなく、純粋にアタッカーだ。

新たに加わった元オランダ代表FWロメオ・カステレン、オーストラリア代表FWニキータ・ルカヴィチャもドリブラーである。

テクニシャンとして期待され、とてつもない髭をたくわえていたことでも話題になったブラジル人MFヴィトール・サバも、使ってみればボールキープの切れ味が強みであり、ゲームメイクは得意ではなかった。髭も剃ってしまった(それはどうでもいい話ではあるが)。

(立派な髭のヴィトール・サバ)

したがって、守れることは守れるが、一方の攻撃では前にボールを送っても次の展開に移行できず、一発を狙うだけのサッカーとなってしまい、戦術が片手落ちになった。

その弱点がAリーグの各チームには研究され尽くされているため、国外では強いが国内ではサッパリいいところがないという状況が続いている。

【4ページ目:低迷脱出に必要なもの、そして日本人二人への大きな期待 に続く】