戦術に関してもノートにメモしながら見ていたのだが、どう考えてもスコットランド4部のチームにおける戦術分析に需要があるとは思えないので簡単に纏めよう。
試合はコーナーキックから失点したQueen's Park Football Clubが、攻め続けるも点を奪えないまま進む。空中戦が得意ながら足下の器用な6番、スピードのある9番でカウンターを狙うクライドに対して、1・5列目にテクニシャンを揃えたQueen's Park Football Clubはボールポゼッションを高めて攻撃を仕掛けていく。
多くのコーナーを得るものの、長身選手が少ないことから水際で阻まれてしまうQueen's Park Football Club。それこそ日本代表が不調の時のように、チャンスがなかなかゴールに繋がらない。PKかと思われるチャンスもあったが、審判の判定に阻まれてしまう。
そして試合も終わりかと思われたロスタイム、フットボールの女神はQueen's Park Football Clubに微笑んだ。コーナーキックでの競り合いからPKをGETしたQueen's Park Football Clubが、残り数秒というタイミングで試合を振り出しに戻したのである。
ホーム有利な判定、という見方も出来るかもしれないが、ドラマチックな幕切れであったことは間違いない。
ハムデン・パーク復帰戦を、奇跡的な引き分けで飾ったQueen's Park Football Club。公式がハイライトをアップしてくれているので、試合に関してはこれを見ていただければ雰囲気が解るはずだ。
1つ特筆するべきことがあるとすれば、バーミンガムやブラックプールで活躍したバリー・ファーガソンがクライドで指揮をしていた点だろうか。
的確な交代策でQueen's Park Football Clubを追い詰めた彼が、近い将来モイーズやファーガソンのように欧州戦線に殴り込む可能性も無いとも言えない。実際非常にソリッドなチームを作り上げており、俯瞰でフットボールを見るセンスのようなものを感じさせた。
Queen's Park Football Clubで戦術的に言及するべき点で言えば、サイドチェンジを多用していた点である。サイドバックを押し上げたスペースにボランチが入り込み、そこから一気にサイドチェンジを狙う場面が目立った。そのサイドチェンジの鋭さ、ギリギリを狙う弾道の低さは、Jリーグなどを生観戦していても余り見られるものではなかったように感じられた。
「美しいフットボール」。
定義は人それぞれあるだろうが、それを追い求めるアマチュアクラブの存在は、スコットランドのフットボールに爽やかな風を吹き込む。1人のフットボールファンとして、単純に彼らのフットボールに賞賛を送りたい。
ハムデン・パークの夕空に、彼らの歌は溶けていった。