例えば中国や東南アジア、そういった場所でのフットボールアカデミー開設は、どちらかといえばマーケティング的な意味合いが強い。ヨーロッパ内でのアカデミー開設と比べると、どうしてもEU外枠などの存在で選手の獲得が難しくなってくることから、「才能の青田買い」というよりは「国内フットボールのレベルを高めてくれる」スクールになり得るのだ。特に南米に優秀な選手が多く存在することを考えると、ヨーロッパでの青田買い以上に競争は激しくなる。
日本でのケースと考えられるのは、宮市選手だろうか。オランダでは期待出来るパフォーマンスを見せ、そして若い時に英国に渡ったことでホームグロウン枠に登録されたにも関わらず、彼にはプレシーズン以外で、チャンスを与えられることは無かった。アーセナルでのこのような若手の厳しい競争を考えると、東南アジアなどでのスクール出身の選手に、ビッグクラブがそこまで期待しているとは考えにくい。世界中のエリートが集まってくるようなビッグクラブにとって、サッカースクールはクラブのイメージを高めるという重要な役割も果たす。
国内に優秀な指導者が不足していれば、海外から派遣された指導者の存在は大きい。彼らをわざわざ国のサッカー協会が招聘する必要もなく、サッカースクールという形で向こうからやって来てくれることになれば、若手育成においてポジティブな効果が見込めるはずだ。
アトレティコの株式を購入した中国人資産家が、「中国にアトレティコのアカデミーをオープンしたい」とコメントしたが、これは「優秀な若手の囲い込み」を目的にしたアカデミーとは考えづらい。むしろ、「中国でのサッカー人気を高めるため」、といった側面が強そうだ。フットボール後進国では、才能をビッグクラブに奪われてしまうデメリットよりも、質の高い育成を提供できるというメリットの方が大きい。
地域クラブとの協力、クリニック等の開催などのメリットも存在しており、アメリカフットボールについて記事を寄稿するマイク・ウォイタラ(Mike Woitalla)氏は、「アメリカの指揮官育成プログラムのレベルが限られている現状、海外クラブの指導者が行うクリニックなどは出来る限り奨励されるべきだ」とコメントしている。