実はこの試合、シャーフ監督は山口をトップ下で起用していたのだ。

より正確にいうと、攻撃の際はトルコ人のケナン・カラマンが1トップを務め、山口がトップ下、清武がやや右サイド寄りに位置するが、守備の際には山口と清武が最前線の中央でボールを追い、ケナンが右サイドをカバーする変則フォーメーションだったのである。

そのうえでほぼ一方的にブレーメンに攻められていたため、実質的には清武と山口の“偽2トップ”という不思議な現象が起きたのだった。

シャーフ監督は何を意図したのだろうか。山口の攻撃力を買ったのか、厳しくいえばヴォルフスブルク戦で3失点に絡んだ守備を軽いと見たのか。ここ2試合センターバックで起用されたセネガル人サリフ・サネが中盤に戻ってきた事情もあるだろう。

真相は不明だが、どちらにせよウーゴ・アウメイダが出場停止中でチームが得点力不足にあえぐなか、シャーフ監督が古巣を相手に選択した苦肉の策であった。

しかしこの奇策は大失敗に終わる。山口は積極的に攻撃に絡み、シュートも2本ほど放ったが、ハノーファーは早い時間帯に2失点を喫してしまったのだ。そのため攻撃に転じざるを得なくなり、シャーフ監督は急遽FWのアーダーム・サライを投入。山口は決して悪いパフォーマンスではなかったものの、戦術の都合で早期交代の憂き目にあってしまったのである。

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