■8位・山口/猛威を振るった“トリデンテ”が解散し、新機軸を導入
小野瀬康介、オナイウ阿道、高木大輔の強力3トップが躍動し、序盤戦から安定して上位をキープしていた山口。アンカーを置いた4-3-3をベースに、司令塔の三幸秀稔を中心としたパスワーク、ピッチを幅広く使ったサイドアタックで旋風を巻き起こした。
だが、リーグ戦25試合で10得点と快進撃を支えた小野瀬が7月末にガンバ大阪へと移籍。これにより“トリデンテ”が解散となり、その穴埋めに苦慮することとなる。
技巧派の丸岡満、8月に北海道コンサドーレ札幌から獲得したジュリーニョ、左サイドからコンバートされた高木らが右ウイングで起用されたが、チャンスメイクからフィニッシュまで多大な貢献をしていた小野瀬の穴は簡単に埋まらない。
そして、チームには小野瀬在籍時から露呈していた別の問題も重なった。攻撃的なスタイルを貫く一方で、失点がかさんでいたのだ。いくら得点が多くてもそれ以上に失点すれば、白星からは遠ざかる。
20節・岐阜戦から34節・大分戦までの14試合で7分7敗と長いトンネルに入り、順位も2位から13位までダウン。35節の横浜FC戦でリーグ戦約3ヵ月ぶりの勝利を収めたとはいえ、この試合でも2失点を喫するなど、守備の不安定さは拭えなかった。
ここで霜田正浩監督が動きを見せる。久々の勝利にも浮かれることなく、次節の岐阜戦より3バックを本格導入し、ディフェンスの整備に力を注いだのだ。
3バックで戦った36節からの7試合(延期分の26節・町田ゼルビア戦含む)で4失点とその効果は数字に表れる。特にリベロで起用された大ベテランの坪井慶介は、落ち着き払ったプレーで安定感をもたらした。
3バック導入後はサイドアタックの破壊力こそやや低下したが、反面守備力は向上した。4バックに戻した最終節・アルビレックス新潟戦では攻守が噛み合い2-0と完勝を収め、良い形でシーズンを締めくくっている。
小野瀬の穴を埋める補強はもちろん、守備と攻撃のバランスを整えることができれば、来季のJ1昇格は現実味を帯びるはずだ。