中島:逆説的なのですが、この地域の面白さというのは、そのスタンダードがなかったことだと思っています。

つまり、サッカーってどんな服装していくの?どうやって応援するの?例えばゴール裏とメインスタンドがあったら、どこに座ればいいの?というところからのスタートだったんです。

この夢スタが竣工する以前、四国リーグに在籍していた時は人工芝のピッチで試合をしていたのですが、そこはメインスタンドしかないんですよ。そうすると、その時代から応援してくれているファンの中には、夢スタが竣工した後も、ゴール裏ではなくメインスタンドに座る人も沢山いるわけです。

だから、ずっと飛んだり跳ねたりはしていないかもしれませんが、夢スタのメインスタンドのほうにも昔から応援してくれているファンもけっこういます。昔はメインスタンドしかなかったから。

これは世の中のサッカーカルチャーとはちょっと違いますよね。でも狙ったわけではなくて、この地にあったその当時のものを一緒に作っていこうとすると結果この文化になった。

自分たちから夢を掲げ、そこに共感してくれた人と一緒に「新しい文化」を作っていく。だけどあるものを使うみたいな。この共創関係は、この地域独特の面白さなのかなと思いますね。

「応援の型」とかって、それが正解かどうか誰も分からない。たぶんファン中にも、もっとこうやったらいいとか、野球みたいな形式の応援のほうが盛り上がるんじゃないかとか思う人もいらっしゃるんじゃないかと思います。

でも別に誰も全否定しない。なぜなら私たちにはスタンダードがなかったので。そういう意味で、ゼロから共に作り上げていく楽しさというのは、確かにこの町にあるのかなと思いますね。