――船旅といえば、クラブのテーマの中に「海賊」というのもありましたね

中島:夢スタでは、私たちスタッフとボランティア組織「Voyage」のみんなで、海賊の衣装を着てお客さんをおもてなししています(笑)。

それも、私たちのチームやスタジアムのコンセプトです。今治は海の町だから、クラブのエンブレムカラーは瀬戸内海の群青、夜の海を照らす灯台の光・黄色、上がる波しぶきの白。

群青とイエローとホワイトであって、ブルーでもネイビーでもないです。言いやすいからブルーとネイビーというだけで、私たちは群青、瀬戸内海の海の色であり、灯台の光です。

そうすると私たち「海賊」として、この町から世界の波にうって出ていくこの景色は絶対に消せない。だからスタジアムにはバックスタンドがないんです。

残念ながら先日亡くなられたのですが、我々の会社のアドバイザリーボードに建築家の鈴木エドワードさんがいらっしゃいます。夢スタがまだ山だった時にきて、向こう(海側)の景色を見てこのように仰いました。

「このチーム、この風景を大事にしていいんじゃないですか。」

もちろん土地とかお金の制約もあったのですが、この風景とストーリーを大事にするがゆえに向こう(バックスタンド)がないです。吹き抜けになっています。

もちろん次のスタジアムも、できる限り海の景色を残したい。瀬戸内海から昇る朝日も美しいですし、この地域にしかないものを残していきたいですよね。

そうすると、スタジアムは船に見立てることができる。選手のクラブハウス…選手入場の時、LDH JAPANのアーティストの方々が作ってくれたFC今治応援ソングがかかって、サビの部分でクラブハウスのドアが開きます。

ドアが開くのを待つ選手の横には「We sail to the Dream」(夢に向かって航海する)…造語ですけどそれが壁に刻まれている。

今から夢の舞台に向かって私たち出航して行くぞというのを、選手が入場するの最後の瞬間に残してほしい。そんな選手をお客さんが拍手で迎えて、今から一緒にこの船で旅をしていくというストーリーを作る。

そういう場所にしていきたいという想いはありますね。