――シンガポールのタンピネス・ハブを見た衝撃はやはり大きかったですか?

複合型スタジアムは今でこそ「ボールパーク」などが話題になりますが、タンピネス・ハブはそれがあのコンパクトなサイズでできている。席が5,000席しかなく人工芝。

ただ、365日24時間オープンで、グラウンドは一般の市民にも開放されていて出入りも自由。子供たちが遊んでいることもあります。人工芝なのでライブに使おうが何らかのイベントに使おうが何でもOKなんです。

日本の天然芝の競技場は、子供がスニーカーでピッチに入ることも許可されず、トップアスリート優先になっているところが多いです。正直そこはあまりピンと来ないところもあるんですよね。どちらが良い悪いではなく、実用性を考えれば別の形はあっていいんじゃないかと。

人工芝はまだJリーグでは認められておらず、とはいえ札幌ドームの可動スライド式グラウンドはスペースの問題が難しい。

そうしたなか、最近昇降式というのが出てきました。技術的にはピッチを上に上げて屋根にしてしまうことができるんですよね。そこに人工芝ピッチが床から登場する、というのもありなんじゃないかと。

さらには、そうするとスタジアムはアリーナと化し、コンサートやインドアスポーツを併用することが可能となり、しかも全天候型。こちらにも注目しています。

※国内では横河システム建築が開発中。既存スタジアムへの増設方法も紹介されている。

――タンピネス・ハブは街の中でどういった位置づけなんですか?

複合商業型というと分かりやすいですが、タンピネス・ハブの場合にはあまり商業第一といった色はなく、市民の憩いの場、コミュニティが創られる場、といった感じです。

駅から10分くらいのところにあるんですが、その手前、駅直結のところには本格的なショッピングモールがいくつかあります。そこは既存の消費社会の象徴的な形のモールなので、そことは棲み分けをしています。

タンピネス・ハブの中には、庶民の屋台村やカルチャー施設、幼稚園などがあって、「人々が集まることで価値が生まれる」をゴールにしているような施設ですね。