救世主と奇人
話の本筋ではないため手短にはなるが、アンドレア・ラドリッツァーニこそ、今世界で1番のオーナーだと感じている。
2部降格以降、リーズはオーナー問題に苦しんだ。かつてチェルシー買収で波紋を呼んだケン・ベイツ、ドバイのGFHキャピタル、カリアリの大オーナーとして知られたマッシモ・チェリーノ…彼らはいずれも、狂信的なヨークシャーのサポーターを満足させられなかった。
ラドリッツァーニはフットボール畑の出身ではない。しかし、彼には“誠意”と“センス”があった。
クラブのペイチャンネルであるLUTVをスマートフォンアプリ内に設置、UIの大幅刷新と共にライブストリーミングの機能と、1試合単位のペイ・パー・ビュー(1試合1ポンド未満の良心価格)システムを設計し、大型の衛星中継がない地域ファンへの視聴促進を促した。
Amazon Prime Videoの密着取材をドキュメンタリー配信することも、世界中と“今のリーズ”を繋ぐ関係づくりに一役買った、大きなポイントだろう。こうした彼の、コミット型のグローバルマーケティング、およびブランディング戦略には脱帽である。
偶然にも、私の親友の父は、ラドリッツァーニと交友関係がある。南フランスのワイン醸造所で出会ったという彼曰く、ラドリッツァーニは気取らず、気さくな男でありながら、常に他人の話を真摯に聞く男だそうだ。その“聞く力”こそがきっと、情報収集の基盤であり、フットボール界きっての“奇人”と、熱き北のサポーターたちとの相性を見抜くきっかけとなったのであろう。
このアイコニックな指揮官の敷く、アタッキングフットボールが、いま世界で最もホットな話題である事は間違いなく(私は2001年のアルゼンチン代表を観て以来、マルセロ・ビエルサの信奉者のひとりである)、今回はそのグループで鍵となるプレイヤーたちを、5名ご紹介する。
私の心残りは2つ。今回そこに漏れた中にも、多くの魅力的なキャストがいること。そして、このコラムを“あの開幕戦”までに書き上げられなかったことである(5名のうち2名が開幕戦で得点者となった)。