「日本を前提に考えることをやめよう」
――これから海外に挑戦しようという方が、日本で準備しておいたほうがいいことは?
「日本の環境を忘れる」ことです。それをせずに行けば、まずメンタルが持っていかれます。「こんな環境ではやっていけない」と思ってはダメですね。
本当に日本って整いすぎているんです。どこにでもきれいな陸上競技場があります。こちらはそれがありません。そのギャップが大きいです。
――治安の問題が気になっている方も多いと思うんですが、こういうことに気をつけるべき…というのはありますか?
こちらの人は優しいですよ。困ったことがあれば助けてくれます。なので、イメージよりも治安は悪くないんですよ。夜は出歩かないのでその時間はわかりませんが…。
ただ、スポーツ観戦などに行く時は気をつけた方がいいかもしれないですね。負けたりするとこちらの人は熱くなるので。暴動が起きたりすることも当たり前なので、そこはちょっと気をつけるべきだと思います。熱が入ると暴れる人もいますので。
――答えにくい部分ではあると思いますが、給料についてはどうですか?
自分の給料は言えないんですけど(笑)。テストで合格して契約した場合、最初は800ユーロ(およそ10万円)ほどだと思います。また、日本と違って食費や家賃などは全部別なので、クラブが払ってくれます。それもピンキリですけどね。
ただ、支払いの遅れについては覚悟しておいた方がいいですね。その月のその日に支払われるということはなかなかありません。それも含めて「日本の環境を忘れろ」ということです。
――Jリーグを経験せずに海外へ行く選手が増えていますが、逆輸入で日本に戻ってから活躍するケースはまだあまり多くありませんね。
日本人の技術が高いからというのはあると思います。こちらは技術優先というよりは、球際や戦う能力が要求される環境なので。セルビア人もJリーグで挑戦していますが、やはりフォワードの大きい選手が活躍しているイメージです。
そこはちょっと難しいですね。自分もはっきりとは言えませんが、1番は技術の部分かなと思います。
――これから海外に行こうという選手にかけるアドバイスがあるとすれば?
やはり、本当に「日本を前提に考えない方がいい」というところだと思いますね。日本の考え方を捨てることはできないでしょうが、それを当たり前に思わないことが重要です!
海外で長くプレーし、安定した成績を収めている志村選手。彼が成功している理由について、海外挑戦をコーディネートした『EUROPLUS』の辻氏はこのように話していた。
「何人もモンテネグロに選手を送っていますが、そこはサバイバル。セルビアまでたどり着く選手は本当に少ないんですよ。うまい選手はたくさんいますが、『強い選手』がいないんです。精神的な部分も必要なんです。
『うまい選手から順番にプロになる』と日本の選手たちは信じているのですが、世界では違います。『強い選手が生き残る』ことが多いんです。
私たちも何度も伝えているのですが、海外に行って驚いて、自分の弱さを認められずに言い訳をして帰ってくる…という選手が何人もいました。
きっと、実際にプレーしていない我々が伝えてもダメなんです。体験した選手が発信していかなければ、日本のサッカーから『強い選手』が生まれなくなってしまいます。
セルビアの1部リーグで、日本人がこれだけ長くやっている。それは志村選手だけなんです。日本のサッカー界としても『宝』なのではないかと思うんです。
この記事を多くの方々に見て頂いて、志村選手の成功しているところを注目してもらって、それを追いかける方々が増えて下さったらいいなと思います」
グローバル化が進み、海外のクラブへ移籍することは容易になった。しかしそれと同時に、そのチャンスを生かすことができずに終わってしまう選手も多い。
しかし、今後日本が海外のチームと戦う上で、彼らが肌で感じた「欧州の風」の経験は非常に重要なものになるだろう。志村謄に続く選手がたくさん出てくること、それは今後のサッカー文化の発展にも大いに寄与するはずだ。
これを読んだ君がもし欧州へと飛び出したいならば、『EUROPLUS』の門を叩いてみるのもいいのではないだろうか。
インタビュアー:石川 美紀子 / Mikiko ISHIKAWA
セルビアをはじめ旧ユーゴ諸国で活躍する日本人サッカー選手にインタビューをしながら旅をしています。彼らが何を見て何を考えたのか、異文化の中で挑み続ける彼らの想いを丁寧な取材で紡ぎ出します。
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