8月7日、明治安田生命J1リーグの鹿島アントラーズはレネ・ヴァイラー監督の退任を発表し、その翌日に岩政大樹コーチの新監督就任をリリースした。

開幕から上位争いを展開するも、直近リーグ戦5試合勝ちなし(2敗3分)で順位を5位まで下げていたなか、第24節・サンフレッチェ広島戦後に突如起こった監督交代。驚きの声も多数上がり、大きな話題を呼んだ決断となった。

今回の当コラムでは、監督交代に至るまでの過程とチーム編成を巡る近年の動きを整理しつつ、岩政監督の初陣となった第25節・アビスパ福岡戦の戦いぶりから見えたポイント、そして指揮官とフロントに期待したい点について述べていきたい。

“必然だった”と表現できる退任劇

今季より就任したヴァイラー監督(コロナ禍のため開幕前の合流が叶わず、開幕直後は岩政コーチが指揮を代行)は、基本戦術を直線的に攻める「縦に速いサッカー」に設定。スペースへパスまたはロングボールをどんどん供給し、サイドアタックを軸に中央突破を織り交ぜて崩していくスタイルを標榜していた。

オールラウンダーの鈴木優磨が前線を幅広く動いてチャンスメイクし、開幕からゴールを量産したエースの上田綺世が仕留める形が機能してスタートダッシュに成功。6年ぶりのリーグ制覇も現実味を帯びた。

暗雲が立ち込めたのが、上田の海外移籍(ベルギー1部のサークル・ブルージュへ)が決定した7月頭以降だ。最大の得点源を失ったチームは、ここから得点力不足に直面していく。決定直後の第19節・柏レイソル戦(2-1で勝利)、第20節・セレッソ大阪戦(3-3のドロー)こそエヴェラウドの活躍もあり複数得点を記録したが、その後のリーグ戦4試合で奪ったゴールはわずか1。

リーグ戦18試合で10ゴールと約2試合に1点のペースでネットを揺らしていた上田の穴はやはり大きく、停滞ムードを払しょくできないまま、監督交代という結末を迎えた。エースの移籍という事情があったとはいえ、その穴をどう埋め、攻撃の形をどう構築するかという点で工夫が見られなかったのも事実だ。

非常に厳しくなってしまったが、リーグ戦は逆転優勝の可能性を残しており、ベスト8まで勝ち上がっている天皇杯も戴冠の可能性がある。タイトル獲得へ向けチームを立て直す意図に加えて、一部ブラジル人選手との不和やマネジメントを巡るフロントとの齟齬なども報じられており、ヴァイラー監督の退任は“必然だった”と言えるだろう。