監督交代の共通項は?
もっとも、近年の鹿島において、シーズン途中での監督交代は珍しいことではない。さかのぼること7年前の2015シーズンでは、7月にトニーニョ・セレーゾ監督から石井正忠コーチへスイッチ。石井監督は同年のナビスコカップを制すると、翌2016シーズンはリーグ優勝(1stステージ優勝&チャンピオンシップ制覇)と天皇杯制覇を成し遂げた。
短期間で国内3大タイトルを獲得した石井監督だったが、2017シーズン途中(5月末)に解任の憂き目に遭う。コーチから昇格した後任の大岩剛監督はリーグ戦で上位に導きつつ、2019シーズンに悲願のAFCチャンピオンズリーグ優勝を果たし、契約満了という形でクラブを去った。
2020シーズンから指揮を執ったザーゴ監督は、これまでクラブが伝統としてきた「巧みなカウンターとセットプレーの得点力、リードをしたたかに守り切るスタイル」とは異なるポゼッションスタイルを植え付けようとした。しかし、ザーゴ体制は2年連続で開幕から調子が上がらず、徐々に巻き返した1年目は5位でリーグ戦を終えたものの、2年目(2021シーズン)の序盤戦で任を解かれた。
後を受けた相馬直樹監督(コーチから昇格)は、ポゼッションスタイルを継続しながら課題となっていた守備の強化に着手。コンパクトな守備ブロックの構築と前線からの連動したプレスを落とし込んだことでチームは上昇気流に乗り、4位でフィニッシュ。契約満了でシーズン終了後に退任した。
これらの事例に共通しているのは、「①トップチームのコーチ(クラブOB)が監督へ昇格」「②前任者のスタイルを引き継ぎつつ、課題を整理して戦術に落とし込む」「③監督交代後に成績の向上またはタイトル獲得を実現」である。
今回のヴァイラー⇒岩政という選択も「①トップチームのコーチ(クラブOB)が監督へ昇格」という流れを継承しており、②と③については、これからの戦い次第となる。