ミシャ式のシャドーで培ったポジショニングの妙

A・ロペスは2018年、韓国の強豪FCソウルに加入。6ゴールを挙げたが、チームはKリーグ11位に低迷し、2019年からは札幌に移籍。いきなり、第3節の清水エスパルス戦で4ゴールを挙げる離れ業をやってのけるも、その後は尻すぼみに終わった。

リーグ優勝を争う広島やソウルとは違い、当時の札幌はJ1に定着しているとは言えないクラブ。ミシャ監督もパスサッカー志向の攻撃だけでなく、積極的な守備で前線からボールを奪う「オールコート・マンツーマン」からの速攻を採り入れた。これによりシャドーでボールを持ち過ぎるA・ロペスのプレータイムは、広島時代の2017年から比較すると約1000分間減った。それでも彼の90分換算のシュート数は4本を超えていた。

転機を迎えたのは2021年。札幌は前年の夏に日本代表に定着していたFW鈴木武蔵(ガンバ大阪)が海外移籍、元イングランド代表FWジェイ・ボスロイドの衰えも顕著となるなど、FWの編成に大きな変化があった。

その中でミシャ監督はA・ロペスを[3-4-2-1]の1トップに据え、開花していない彼の得点能力に賭けた。難解な“ミシャ式のシャドー”を担うことで、相手のセンターバックとサイドバック、ボランチの間のスペースでパスを受けるなど、戦術的なポジショニングの妙を培って来た彼は、それを活かして味方からの多彩なラストパスを引き出すことに成功。

2021年前半のA・ロペスが出場14試合で12ゴールを挙げたのは、彼の成長過程を見ていれば必然だったのかもしれない。

札幌で爆発的な得点力を披露するA・ロペスには札束攻勢で中国のクラブが迫り、2021年7月には武漢足球倶楽部へ移籍。中国でも17試合7ゴールとまずまずの結果を残したものの、半年後にはJ1制覇を狙う横浜FMに移籍。得点王に輝いた日本代表FW前田大然がセルティックに羽搏いた代役として白羽の矢が立った。