AFC転籍も困難か

ではAFC転籍の可能性はどうか。西側諸国といわれる日本、韓国、オーストラリア、グアムなどは当然反対に回るだろう。だがロシアとの友好関係を考えると中国、北朝鮮、インド、中央アジア勢は賛成に回る可能性が高いため、過半数投票で採決する場合はロシアのAFC転籍は認められる可能性がある。

実際にロシアは今年6月に開催された中央アジア選手権に招待国として参加する予定だった。ところが大会直前の4月27日に国内カップ戦の決勝戦など、国内大会とレギュレーションが重なる過密日程のため、大会を辞退した。それでもゲストとして招待した中央アジアサッカー協会は、AFC転籍後にロシアを受け入れると見られている。

ただし、ロシアはAFC転籍について慎重な姿勢を見せている。ロシアサッカー連合は昨年末にAFC転籍を議論していたが、結局結論を先延ばしにしたため、方向性は未だに決まっていない。

昨年2月にサウジアラビアサッカー連盟のヤセル・アルミサヘル会長がロシアのAFC転籍について慎重に議論と検証を重ねる姿勢を見せているため、一筋縄ではいかなそうだ。

またこの事案は2006年のオーストラリア代表のOFCからAFC転籍と比較されることもあるが、長い時間をかけて両連盟から許可を得るために、政府の協力を得て入念なロビー活動を展開してAFCに転籍したオーストラリアとは事情が異なる。ロシアがAFCに転籍するためには、多くの各国協会から支持を得なければならないため、あぐらをかける余裕は一切ない。

仮にAFC加盟が実現したとしてもUEFAと比較して試合開催会場などのインフラ面の劣悪さ、競技力の低下、放映権料や大会参加ボーナスの減少など経済面と競技面において多くのデメリットが顕在している。さらに移動にかかる負荷や過酷な気候での試合などアジア特有の障壁もあるため、簡単に決断できないだろう。

そしてFIFAがロシアの処遇に対してどう判断するかだ。FIFAが制裁を緩和しない限りワールドカップ予選に出場できない(現行のアジアカップ予選はワールドカップ予選と連動しているため、FIFAが大会参加を許可しない場合はアジアカップも出場できない可能性がある)。

仮にFIFAが将来ロシアの大会参加を認めたとしても、日進月歩の勢いで成長するアジアサッカーの競技力に苦戦を強いられる可能性もある。そのためロシアにとってアジアは決して安住の地にはなり得ない。