ベトナムとタイの違い
――その後はベトナム1部ホーチミン・シティを率いました。
代表は短い期間にパッと集まって大会が終わったら解散という感じでモチベーションをちょうどいい具合にキープしたまま始まって終われます。
クラブは毎日なので、1年間やることでの多少のマンネリやチームが良くない時期など、そういうところがちょっと違うところだと思います。ホーチミンのときは1度連続で10回勝てなかった時期もありました。クラブのほうはそのあたりの難しい部分はあったりします。ただトレーニングが継続できることが利点です。「代表のときはあんなに集中して頑張っていた選手が、クラブでお金を貰っているのになんでクラブではモチベーションに差があるんだろう」とね(苦笑)。
そこは注目度の差なのかもしれないですけど、モチベーションが代表のときに比べるとやや低いと思いました。あと試合における集中力、盛り上がり方はちょっとフワっとしていて、下手したら「練習試合なのかな?」というぐらいのテンションを感じたときもありました。
――タイでもU-20代表を率いていましたけど、タイとベトナムで違いはありましたか。
タイの場合は18、19歳が多かったので、まだまだプロなんですけど成り立てというか、お小遣いをもらいながらやってるってレベルでした。(当時の)ブリーラム・ユナイテッドは石井(正忠、現タイ代表監督)監督がトップで、僕がセカンドチームとU-20代表監督でした。
ベトナムにいたので東南アジアの文化というか、なかなかスケジュールが決まらないなどは違和感がなく、「まあ、こんなものかな」という感じでやっていました。
ベトナムと比べると、タイは車文化でインフラが進んでいるんですよね。ベトナムはまだモーターバイクの文化なんですよ。サッカーのインフラもタイのほうがいいです。スタジアムやグラウンドの芝はいい印象を持ちました。
――タイ代表の石井監督は今回アジアカップに挑戦されますね。
石井監督は2年連続国内3冠達成で、こんなに結果を残した監督はいないぐらいの素晴らしい実績でタイ代表監督になりました。タイ国内ではすごく期待されていると思います。
あとはタイの場合も結構スケジュールがなかなか決まらなくて、カタールに入っていますけど、どこまでベストメンバーを組めているかがポイントだと思います。タイの場合はベトナムや日本と違って代表を辞退する選手がいるんですよね(苦笑)。
現在のベトナム代表
――現在のベトナム代表の評価について教えてください。
私の次の次の監督に、韓国人の(パク・ハンソ)監督が来たときにすごく結果を残したんですよね。特に東南アジアでは(2018年の)U-23アジアカップで準優勝して結果を残したんですね。そこの中心になっていたU-20代表で(2017年の)ワールドカップに初めてベトナム代表が出た選手がいたので国際経験は割と豊かですね。
私が見ていたときよりも下の世代にポテンシャルがありそうな選手がいた。それが韓国人の監督のもとで成功して、そういう意味では経験豊富な選手は多いのかなという印象はあります。
――就任時と比べて感じた変化を教えてください。
僕が行ったときはベトナム代表がちょっと低迷期だったらしくて、サッカーに関してはネガティブな印象を持っていた人が多かったんですよね。(国民性としては)ちょっと勝つとワーッと火が付くというか。これは日本人も同じなんでしょうけど、そんな印象を持っていました。私の初めての公式戦が2014年の韓国の仁川でのアジア大会でしたが、第1戦でイランに4-1で勝ったらすごく盛り上がったらしくて驚かれました。それが韓国人の監督でアジア2位になって、なおさら火が付いていまのベトナム代表はものすごいブランドになったと聞きました。
――三浦さんが感じるベトナムサッカーの発展と課題について教えてください。
日本と比べた場合、草の根の広がりがまだ狭いと思います。特定の強いクラブが下部組織だと3つぐらいしかないんですね。これはタイでもそれを感じたんですけど、インフラやいいコーチの指導(の改善)が急務だと思います。
人材はたくさんいると思います。サッカーが強くなるにはマジックはないので、まず下部組織、アカデミーの数を増やして、いいコーチを教育してトップリーグを強くする。これしかないんですよね。日本もそれで強くなってきた。そこが東南アジアの課題かと思います。