衝撃を受けた先輩と同期

――川崎のセンターバックで衝撃を受けた選手はいましたか。

川崎ならめっちゃいますね。当時のセンターバックは奈良(竜樹)くん、マイケル・ジェームズ、谷口彰悟さん、エドゥ、(車屋)紳太郎さんは左サイドバックだったので4人いました。みんな上手いし、強いし、速い。

俺が一番衝撃を受けたのは奈良くんですね。いまでもよく(奈良の)プレー映像を見ているんですけど、メンタリティー、守備はすげえなと思います。その「すげえな」と思ったきっかけが何の試合か忘れたんですけど、FWがボールを落としてドフリーでMFの選手が思いっ切り振りかぶっている状況で、奈良くんがペナルティーエリアの中にいました。その状況で急所を前面に押し出してシュートブロックしようとしていたんですよ!

それを見たときはサポーターの感覚ですけど、本当この人すげえなと。1試合にマジで命を懸けているなと思いました。

――急所はみぞおちなどですか。

みぞおち、下腹部、全部ですね。何も気にせずにシュートブロックで、腕を後ろに組んで避けないんですよ。ボールをずっと見て、シュートブロックしにいって、ピンチを防ぐ。「カッケーな」と。男が惚れる男だと思います。

――川崎では公式戦出場ゼロに終わりました。

そうですね。試合が来ないことは苦しかったですね。試合が来ない、試合に出られないので、自分の存在価値が示せない。しかも高校サッカーでそれなりにやってきた自信もあって、それが全部へし折られた。2年目の最後のほうで同期の(田中)碧が試合に出て、本当にすごく悔しかったですね。自分も試合に出て価値を示したいとずっと思っていました。

奈良竜樹(右)とマッチアップする田中碧

――同期の田中碧選手は刺激になりましたか。

そうですね。あいつの頑張りや努力を見たら『まったく俺は何もしてないんだな』と思ってしまうくらい積み重ねていた。それがスタンダードと思えるようになったお陰で、いまもまだ辛うじて現役でいられるのかなと思っています。

――彼の努力で1番刺激になった部分はどこですか。

俺と碧はよく一緒にいたんですけど、ちょっとでも時間があればサッカーを見ていますし、「碧がいねぇな」と思ったら筋トレに行っている。結果的にその筋トレで足もめっちゃ遅かったのに、いまは普通に速いし、数値上でも変わってきている。いまでも連絡を取るんですけど、「ドイツ楽しい?」と聞いたら「楽しくねーよ。修行だよ」と言っていました。相変わらずだなと(笑)。本当に人間として尊敬しています。