Qolyアンバサダーのコラムニスト、中坊によるレポートをお届けします。

パリオリンピック男子サッカーベスト8、スペイン×日本の試合を振り返る。

スペイン 3-0 日本

率直に言うと、リーグ戦を見ている中でたまにある「今日は全く持ってない日」という試合だった。

日本のシュートがポスト直撃、クロスバー直撃、GKのビッグセーブ、スーパーゴールが入るもVARで数センチのオフサイド判定により取消…と全てが入らない日だった。

もちろん、運がなく負けたというレベルではなく、運以上の強さはスペインに当然あったし2得点を挙げたフェルミン・ロペスの見事な決定力。ここに大きな差を感じる試合だった。

ただ、日本は南米一位のパラグアイに5-0で大勝できた以上、巷でよく使われる思考停止ワードの「世界との差」を使って敗戦を総括することは適切ではない(このワードは一見もっともらしく聞こえるが、今大会の勝ち上がり方を踏まえるともはや適さない)。

「理不尽なオフサイドで負けた」、「誤審まがいの判定で負けた」という言いぶりで結論づけるメディアおよびファンも中にはいるだろうが、この論調で終わるのは何も得るものがないし未来に繋がらない。敗戦時、判定云々にフォーカスしてもそれは矮小化でしかない。
実際、判定自体はルール上妥当なものだった。

かつてのスペイン戦との違い

スペインとは近年のオリンピックにおいて三度戦っている。
2012ロンドンオリンピックでは日本が1-0で勝利。この時はスペイン側が決勝行って当然、スペインの新聞においても「決勝はスペイン×ブラジルで決まり」と報道するなど舐めた雰囲気だったが、その鼻を初戦で日本がへし折り、関塚監督率いる日本が点差以上の圧勝を成し遂げた(スペインはGL敗退。皮肉なことにブラジルは予想通り決勝に進出した)。
2021東京オリンピックでは延長戦の末、0-1の敗戦。
2024パリオリンピックでは0-3の敗戦。

しかし、今回はスコアこそ大差だが東京オリンピックの時よりはスペイン相手に戦えた感覚はある内容だった。あの時は延長戦まで突入したが点を取れる気配がなかった。しかし今回はVAR取消には至ったものの個人技が通用し、相手のゴールネットを揺らし、ポストとクロスバー直撃という、あと一歩運が足りないシュートを数本見せてくれた。10回戦って8回負けるという実力差ではなかった。

そして、ロンドンオリンピックの時と違い、スペイン側も日本を舐めずに確かな実力者と認識した上での対戦であった。

敗戦の中でも得たもの

オリンピック出場16チーム中、唯一オーバーエイジなしの編成で挑みGL全勝は日本サッカー界として初の快挙であり、また一つ前進していることは確か。敗戦に嘆き敗因探しだけをするのではなく、このあたりを冷静に評価することもまた必要。

オリンピック開幕前に書いた記事、「五輪メンバー招集苦戦は日本サッカーの進化に他ならない」の通り、主力選手の招集断念についても日本サッカーの底上げ、層の厚さに繋がっていることも留意すべき。
https://qoly.jp/2024/07/09/bgn...

CF細谷、CB高井は0-3の結果の中でも見事なプレーであり、特に細谷についてはこの試合をチェックした海外のスカウトからすると、Jリーグ所属なのにも関わらず、リーガエスパニョーラのCBをものともせず決めたシーンは驚愕だっただろう。確実にヨーロッパで通用するし、もはや今年の海外移籍先がどこになるのか、というフェーズと感じた。

そして、試合終了後ピッチに倒れ込んだ藤田譲瑠チマ、号泣した小久保ブライアン。
私たちはW杯の舞台で、君たちを待っている。


ライター名:中坊

紹介文:1993年からサッカーのスタジアム観戦を積み重ね、2023年終了時点で962試合観戦。特定のクラブのサポーターではなく、関東圏内中心でのべつまくなしに見たい試合へ足を運んで観戦するスタイル。日本国外の南米·ヨーロッパ·アジアへの現地観戦も行っている(本記事は一週間後、中坊コラムに転載します)。 

Note:「中坊コラム」@tyuu_bou https://note.com/tyuu_bou 
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