今季契約満了となったJリーガーたちが集う『JPFA(日本プロサッカー選手会)トライアウト』が11日、12日に実施された。11日の部に参加したFC岐阜DF小川真輝(まさき)、FC大阪DF藤田雄士(ゆうと)、水戸ホーリーホックMF髙岸憲伸(けんしん)は川崎フロンターレアカデミーの同期で、小学生年代から中学生年代までチームメイトだった。奇しくも同日にトライアウト会場でプレーした3選手の挑戦を追った。

昨年はトライアウトを受験できなかった男

11日午前の部に参加した小川はトライアウト初参加となった。昨年テゲバジャーロ宮崎を契約満了により退団したが、アマチュア契約だったため昨年開催されたトライアウトには参加できなかった。

トライアウト初参加となった小川

「アマチュア契約はチームの事情もあると思いますから、しょうがない部分があります。でもここでのアピールは現役続行の意思を表明する場所でもあると思います。そこに出られなかったことは他の選手よりも、スタートラインが遅れるというか…。すごく焦りが去年ありました。自分はたまたまFC岐阜さんに入ることができましたが、今後Jリーグ全体としてプロ契約の選手が増えていくように、そういう思いをする選手が減っていくといいと思います」と複雑な心境を吐露した。

トライアウトは原則JPFA会員が参加できるため、アマチュア選手だった小川は入会の選択肢がなかった。今回は岐阜でリーグ戦11試合出場と契約満了になった小川は、初めて参加するアピールの機会に向けて思い残しがないようにしっかりと準備して臨んだ。

トライアウトは独特の緊張感が張り詰めており、トライアウトを経験した一部の選手は「あの空気の中で、できればサッカーはしたくない」と話すほどだ。それでも小川は初のトライアウトではそういった空気の中でも問題なくプレーできたという。

「独特の雰囲気があって、みんな人生をかけている雰囲気があった。自分も緊張すると思っていましたけど、こういった経験はなかなかできるものではないですから、楽しもうと思って臨みました」と強心臓の一面を見せた。

紅白戦では川崎アカデミーの同期藤田と右サイドでコンビを組み、藤田が右ウィング、小川が右サイドバックを務めた。小川は「(藤田は)小学校から中学まで一緒にやっていたので、話しやすかったです。『こういうときはこうしよう』と話してコミュニケーションを取れたので良かった」と同期の存在は心強かったという。

直接フリーキックをチームが得ると、足元の技術に優れた小川と藤田はキッカーを名乗り出るも、小川はキッカーを決めるじゃんけんに負けてボールを蹴ることができなかった。

「自分が蹴りたいという一心でした。3人いたので『これはじゃんけんをしよう』と言って、自分は負けてしまったんですけど…。みんなが自分の良さをアピールしたいと思いますから」と悔しさをにじませた。

守備に奮闘する小川(左)

この日は自身が守るサイドを何度か突破を許す場面もあったが、持ち前の足元の技術や正確なパスで立て直しを図るなどピッチ上で奮闘した。

進路については「この先のことは分からないですけど、自分としてはここまでシーズンが終わってからトライアウトに向けて、できることは全部やったというのはあります。悔いはないというか、この先どうなるかはお任せというか。巡り合わせだと思うので、楽しみに待ちたいと思います」

吉報を待つ小川の新天地はどこになるのか。再び鋭い軌道を描くプレースキックをピッチ上で見せてほしい。