桜の花びらが舞う季節、フランスでも大きな蕾が花開こうとしている。 蕾の名はキリアン・エンバッペ・ロタン。わずか18歳にしてリーグ・アンで2桁ゴールを挙げた怪童である。

レアル・マドリー、パリ・サンジェルマン、マンチェスターの2クラブ、アーセナル…。名だたるビッグクラブが今欲しているこの男一体何者なのだろうか?苗木の頃、もとい育成世代から迫っていく。

クレールフォンテーヌ出身

1998年12月20日、パリ近郊のボンディという街で産声をあげたエンバッペは地元のクラブ、ASボンディでキャリアをスタートする。カメルーン出身の父親がコーチを務めていたそのクラブで頭角を現したキリアン少年は、フランスの多く有望株の例に漏れずクレールフォンテーヌ(フランスの国立育成機関)の門を叩く。多くの若手はここで自分より上手い選手を目の当たりにするのだが、才能はここでもトップクラス。当然この有望株を欧州中のスカウトが放っておくわけがなく、地元に程近いPSGや天下のレアル・マドリーなど数々のメガクラブが争奪戦を繰り広げた。

思慮深いエンバッペが選んだのは自国リーグ・アンのモナコであった。U-19版フランスカップであるガンバルデラ・カップを2011年に制覇し、このカップ戦を当時歴代3位の3回(2016年に優勝したため現在は歴代2位)制していたモナコは若き逸材にとって魅力的に映ったのだろう。2013年、レアル・マドリーと合意間近であったにもかかわらずモナコを選択し、キリアン・エンバッペ・ロタンの"咲く"セスストーリーが始まった。 

U-17カテゴリーからモナコでのキャリアをスタートさせたエンバッペはすぐにU-19に昇格し、U-19版UEFAチャンピオンズリーグ(CL)であるUEFAユースリーグにも出場。そして2015年12月2日のSMカーン戦、88分にファビオ・コエントラォン(現レアル・マドリー)との交代でリーグ・アンでのファーストステップを踏む。

わずか16歳347日でのデビューであり、かのティエリ・アンリの持つモナコ史上最年少デビュー記録を21年ぶりに破る歴史的出来事。しかし、これにとどまらず神童はここから様々な記録を打ち立てるのだ。

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