編集部T(以下、――):今回は攻撃的ミッドフィルダー(OMF)部門です。Twitterのアンケートでは、セレッソ大阪の山村和也が一位、中村憲剛が二位、倉田秋が三位という結果でした。まずはその印象から聞かせてください。

カレン(以下、省略):もう少し競るかと思っていましたが、蓋を開けてみたら、山村が圧倒しましたね。本来のボランチではなく攻撃的ミッドフィルダーにコンバートされての大活躍ですし、その衝撃度が大きかったのかもしれません。

――カレンさんの「山村評」は?

繰り返しになりますが、山村には誰しもが驚かされたと思います。あそこまでトップ下で機能することを予想出来たのは誰一人としていなかったのではないでしょうか。186cmの上背がありながら足元の技術も高く、さらに攻撃センスもあることは、鹿島アントラーズ時代から感じさせてくれていましたが…。そのポテンシャルを引き出した、ユン・ジョンファン監督には天晴れです。

ボランチの選手をトップ下にコンバートすることは様々なメリットがありますが、山村の場合は、チームに攻守両面で恩恵を与えています。

攻撃面では、大きく分けて三つ。「前線にタメが一つ追加されることで周囲が自由になる」、「セットプレーでターゲットが増える」、「競り合った後のセカンドボールからの攻撃が可能になる」ですかね。セレッソ大阪の前線はかなり流動的ですが、それを実現させているのも彼の存在かと思っています。

今から10年程前にローマの「ゼロトップシステム」が流行しましたが、あの時は、トップ下に入ったシモーネ・ペッロッタがかなり重要な役割を任されていました。元々はボランチの選手でしたが、彼がトップ下に入ることで、ワントップで起用されたフランチェスコ・トッティは伸び伸びとプレーし、厚みのある攻撃を実現できたわけです。

ペッロッタは山村よりも攻撃的な選手でしたが、ゲームを読む力であったり、相手が嫌がることを突くという面に関しては非常に似ていると思います。なので、このコンバートを見た時に当時のローマのことを思い出しましたね。

――守備面については?

守備に関してのメリットも大きく分けて三つ。「前線からのプレッシング成功率が上がる」、「相手ボランチに自由を与えない」、「運動量で周りの負担を軽減」、ですかね。

今季前半戦、セレッソ大阪が上位争い出来たのは、守備面での統制が取れていたことにあると思いますが、その調整役だったのも山村だと思います。彼の場合、ボランチだけではなくセンターバックとしてもプレーしていたので、「相手ディフェンダーがボールを持った時にどういうプレーをしたら嫌がるか」がわかる。この才能は守備時に大きな力になります。嫌がることを続けることにより相手チームのミスは増えますし、それが結果的にボール奪取に繋がりますからね。

また、その運動量も本当にチームを助けていると思います。

これは攻撃面でも言えることですが、特にセレッソ大阪のようなサッカーをする場合、どこかにサボるプレーヤーが出てくると、簡単に穴が出来ます。ですが、山村のように周囲を助けられる選手がいると、穴の発生率は劇的に減りますからね。

セレッソ大阪は前半戦17試合で15失点という数字を残しましたが、1試合平均に直すと0.88失点です。そして、昨季はJ2でありながら、1試合平均1.09失点。この記録も守備力の向上を如実に表しています。その要因は山村の力だけではないですが、貢献度の高さは明らかです。

上述のペッロッタがイタリア代表でもレギュラー格として活躍したように、山村の代表招集もあるかもしれませんね。ハリルホジッチ監督の志向するサッカーにも合うと思っているですけど…。

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