また違ったパターンのフリーランを見てみよう。これは、先に述べたラキティッチの長いフリーランと、前線3人が絡んだ応用形だ。

今回はラキティッチのランがゴールではなく、連動のスイッチ。

ラキティッチが長い距離を走ることで、コラロフとデミチェリスを牽制。追ってきたフェルナンジーニョが、マークを受け渡さなければならない状況になる。

ミルナーも背後から追っているものの、瞬間的に最も危険なメッシがフリー。当然、ラキティッチによって自由を得たメッシはドリブルの機会を逃さない。

内側にドリブルで入り込むメッシは、一瞬受け渡しにおいて出足が遅れたフェルナンジーニョを神業に近いレベルの股抜きで抜き去り、そのままミルナーを背負いながら内側へ。

スアレスがメッシに近い位置に残っていることで、コンパニとデミチェリスの距離感が狭くなり、SBとCBの間が広がってしまうことから、サニャが内側へ絞らざるを得ない。

そうなると、外に残るネイマールが「死角」で裏に走り込むことが可能になる。

しかし、ここは何とか踏ん張るシティ。サニャは寸前で一歩下がることでネイマールの位置を把握。この後ドリブルで抜かれてしまうものの、そのままシュートに持ち込まれるという最悪の結果は避けることが出来た。

また、DFラインを何気なく埋めるミルナーの気遣いも素晴らしい。コンパニがメッシの迎撃に向かったことで生まれたスペースを、左のアタッカーでありながら自然に潰したプレーは大きい。

本来、このようなDFラインに入るプレーこそ、バルセロナを相手にする際にDMFに求められていたことのはずだ。フェルナンジーニョとヤヤ・トゥーレの攻撃的な位置取りは、実際はDFラインの負担を増大させ、結果的にサイドバック2人の攻撃参加を制限することになってしまった。

この場面のようにミルナーが下がらざるを得ない場面を多くしてまでナスリを高い位置に残すという判断も、攻撃において多くのチャンスを生むことにはならなかった。

【次ページ】右サイドをメインとしたシティの攻撃。