一時期は不調とも言われていたリオネル・メッシという怪物は再びその底知れない実力を発揮しつつあり、彼のドリブルを中心とした攻撃で容易にDFの死角を作り出しては、ネイマールとスアレス、ラキティッチの献身的かつ狡猾なフリーランで相手の守備を崩壊に導く。
新生バルセロナは、より直接的なフットボールで相手を蹂躙するチームとなった。
唯一の不安要素は、体力の消費が激しいラキティッチのところだろうか。彼が下がると、バルセロナのパフォーマンスは攻守において落ちる。
彼を下げる際には、守備的なフォーメーションにチェンジすることも考える価値はあるかもしれない。彼の支えを失うと、最強の3トップがバランスを保つ面で負担になりかねないのだ。攻撃重視の形が全体を間延びさせ、結果として状況を悪化させることも可能性として考えられる。
バルセロナを相手にしたCLでの2試合において、マヌエル・ペジェグリーニは足を止めて真正面から撃ち合う方法を選んだ。
1stレグではCFのエディン・ジェコをサイドに流すことにクッションにするなど、バルサ対策だと思える多少の工夫は見せたものの、攻撃的な姿勢は崩していない。特に守備において、抜本的な意識改革は少なかったように思える。守備的なオプションとしても考えられているナバスの先発は2試合を通して無く、3センターというオプションや、CBデミチェリスの中盤起用などという奇策を使うこともなかった。
2試合目はヤヤ・トゥーレとサミル・ナスリという攻撃的な選手を起用し、勝ち抜けのために攻撃に拘った上でバルセロナの一斉放火を浴びている。
特に2ndレグの後半は「怪物だった。あそこまでシュートを止められた試合は、記憶にない」とアンドレス・イニエスタに賞賛された守護神ジョー・ハートの健闘が無かったら、ワンサイドゲームになっていてもおかしくなかった。
攻撃力を期待されて投入されたはずのフランス代表のサミル・ナスリとコートジボワール代表のヤヤ・トゥーレは攻守に印象を残すことは出来ず、献身的なプレーをこなせるという強みを持つヨベティッチやナバスに、十分な出番が与えられることはなかった。
ヤヤ・トゥーレを徹底して狙われた昨年のバルセロナ戦、そして今年のバルセロナ戦。ペジェグリーニはマンチェスター・シティと共に「自らの美学」を貫こうとした結果、バルセロナの破壊的な攻撃力に再び葬り去られた。
バルセロナの指揮官ルイス・エンリケが「ポゼッションを重視するのがチームのスタイルではあるが、DFの背後にスペースが空いていれば3トップで仕掛けていくことを重視するように意識していた」とコメントしているように、彼らは「美学」を持つクラブでありながら、無理攻めに近い攻撃を仕掛けてくるマンチェスター・シティにしっかりと対応してみせた。