メッシから見た決勝弾
昨季終盤、メッシはキャリア最高ともいえる状態で相手の組織をまさに蹂躙していた。
この試合でもゴールこそなかったものの、鋭いサイドチェンジでイヴァン・ラキティッチの先制点を演出すると、決勝点の場面でも素晴らしいシュートを放っている。そう、メッシがシュートを打ったからこそスアレスの決勝弾は生まれたのだ。
数ヶ月前の話になるので思い出す必要があるかもしれないが、この試合でユヴェントスは守護神のブッフォンが非常に高いパフォーマンスを見せていた。
🤯🤯🤯 Sensational save by Buffon in 2015 final 🙌#UCL | @juventusfcen | @gianluigibuffon pic.twitter.com/io2npdwuIW
— UEFA Champions League (@ChampionsLeague) June 8, 2020
前半のこの神セーブを筆頭に、何度となく決定機を防いでいたブッフォン。彼の牙城を崩すことは簡単ではないとバルサの選手たちも思っていたに違いない。
それでもメッシやスアレスには、“当たっている”GKと対峙した際の豊富な経験があった。
仮に一人で決めきれないとしても、どうすれば有効なセカンドチャンスを創り出せるか――。おそらくそうした判断も加味した上で放たれたのが、ファーサイドへの低く強いシュートだった。
プレーの精度を含め、メッシの実行力がなければ少なくともこの場面で決勝点は生まれなかったように感じられる。スアレスとメッシ。二人の高度な関係性がゴールにつながったのだ。
昨今のJリーグ、そして日本代表を見ていても、日本人選手はまだまだ自分のタイミングでプレーすることが多い。昨年末に体験レポートを掲載したトラウムトレーニングの講習会において、講師を務めた内藤清志氏の言葉が印象的だった。
「日本では“出し手”として優れた選手が昔よりも少なくなっている」
今回、スアレスが“受け手”であったとすれば、メッシは“出し手”だ。
“受け手”というのは要するにオフザボールの動きであり、基本的に判断をそのまま誰でも実行できるためどちらかというと向上しやすい。ただ、優れた“出し手”になるためには高い技術が必要で、特にファイナルサードで相手と駆け引きをしながら「やりきる」レベルに達している選手が日本には少ない。
しかし、欧州の頂点を決める舞台では実際に今回のようなゴールが勝敗を分けている以上、目指すべき場所は明らかだろう。最後はやや駆け足となってしまったが、スアレスのゴールはそういった現実を改めて教えてくれている。