そのジョゼ・モウリーニョは現状、世界で最も有名な指揮官の1人と言っていいだろう。
チェルシーで今シーズン苦しんではいるものの、彼の業績は驚異的だ。自らを「スペシャル・ワン」と自称する彼は、ボビー・ロブソンの右腕として活躍しただけでなく、バルセロナでは「現実主義者」ファン・ハールのアシスタントでもあった。
「選手のマネジメント」、「攻撃での個人を生かす形」をボビー・ロブソンから、「守備での現実的なアプローチ」、「厳格な態度でのチーム管理」をファン・ハールから学んだ事が、インテルやチェルシーでは多くの曲者を1つに纏め、一撃必殺のカウンターを可能にした。レアル・マドリーでの経験で、指揮官としての好みに少し変化が生まれていることも興味深いことではある。
少し話は逸れるが、ヴィラス・ボアスとモウリーニョの違いも興味深い。
同じボビー・ロブソンを師に持ち、モウリーニョの下でコーチングスタッフを任されたヴィラス・ボアスだが、彼の志向するサッカーは攻撃的なものだ。この違いを生んだ要因として推測されるのが、ファン・ハールの存在である。
モウリーニョはファン・ハールの下でアシスタントとしての経験を積み、ヴィラス・ボアスはその経験が欠けている。興味深いことに、モウリーニョの弟子として知られるブレンダン・ロジャースも攻撃的なフットボールを好む事で知られる。
モウリーニョの下で学んだ指揮官達は、フットボールの哲学以上に練習法、マネジメント術などを受け継いでいく傾向にあるのだろうか。
そんなモウリーニョ門下生の中で売出し中の新鋭が、ミドルスブラを率いるスペイン人監督アイトール・カランカだ。
レアル・マドリー時代にモウリーニョの右腕となった彼は、スペイン人でありながらモウリーニョからフットボールを学んだ異端児だ。素晴らしい働きを評価されて8月に契約を延長したばかりで、キャピタル・ワン・カップではマンチェスター・ユナイテッドを撃破。古豪を率い、プレミアへと殴り込む日も近いかもしれない。