付け入るスキは十分

また、他のポジションに目を移しても、守備面には明確な課題がいくつも見て取れる。

言及すべき一つはセントラルミッドフィルダーの所だ。

ここはデ・ブライネとヴィツェルの二人で構成されるが、彼らは共に低い位置に引いてバイタルエリアのスペースを埋める守備を好まない。

逆にボールサイドに対して前向きのポジションを取るケースが多く、その結果として、3バックとの間に大きなスペースを空けるというシチュエーションも散見されるのだ。それ故に、日本の攻撃としては、デ・ブライネ、ヴィツェルの前でボールを触り、彼らのポジションを前に引き出し、その裏のスペースを他の選手が使うという形が有効的だろう。

同様に大きな問題を抱えているのが、3バック(5バック)である。

両ウィングバックの選手は基本的に「人につく」のではなく「コースを消す」ポジションを取ることが多い。欧州のチームがほとんどが採用している守備戦術のため珍しいものではないが、特に右サイドのムニエについてはこの傾向が強く、ポジショニングが曖昧なシーンが目立つ。ベルギーが劣勢に陥る際、右ウィングバックの裏を起点にされた攻撃を受けている場合が多いが、これも決して偶然ではないだろう。

左サイドバックの長友佑都や左サイドハーフ乾貴士は、味方がボールを持った際、ピッチの大外やDFラインの裏に抜け出してボールを受ける動きの質が高いが、彼らの特性はこのベルギー戦でも有効打となるはずだ。

セネガル戦でもこの攻撃が非常に効果的に機能していたので、柴崎やDFラインからの斜めのパスを左に打ち込み、そこで勝負。または、左を起点にしてそこから斜めのパスや動きでバイタルエリアを突く、ペナルティエリアで仕掛けるという戦法も面白いだろう。

そして、DFラインが抱える弱点はこれだけではない。

ヴァンサン・コンパニがこの試合から3バックの先発に復帰しそうな気配があり、これまでよりも安定感は増すだろうが、センターバックの両端とウィングバックの間が「一瞬の緩みを見せてしまう」という悪い癖まではすぐには拭えないはずだ。

ヤン・ヴェルトンゲン、トビー・アルデルヴァイレルトは共に優秀なセンターバックであるが、一人で複数を見るような芸当はそう容易くできない。つまり、守備時にはある程度両ウィングバックのサポートが必要になるわけだが、この二人は決して守備を得意としている選手ではないため、自身の裏を突かれた際の対応には脆さが見られる。

そこで、頭の回る彼らセンターバック陣がそこを埋めようとするわけだが、当然そうなれば彼らは大きく持ち場を離れることとなり、守備ブロックは崩壊状態。いわゆるセンターバックがペナルティエリア外に吊りだされた状態で、ベルギーの失点パターンの一つである。

ベルギーDF陣は対人戦も得意としているため、単独突破はやや困難かもしれないが、意識的にセンターバックとウィングバックの間を牽制する動き、サイドからそのスペースに入れる「斜め前のパス」を多用し、突くべき箇所であることは間違いない。諦めずに続ければ、きっとどこかで綻びが現れると筆者は踏んでいる。