――渋谷区においてサッカースタジアムは街をどう元気にすると考えていますか?

大金:もちろんサッカーの試合で楽しんでいただける、応援するチームがあるというのはすごく大事だと思います。

ただ、サッカースタジアムだけではなくて、これからのスタジアムの在り方としてはやはり“儲かるスタジアム”、いわゆる収益性の高いスタジアムを作っていかないと結局「作ったはいいけどこのあとどうなんだ」となってしまいます。

よって、今回構想としてある渋谷のスタジアムにおいては、今後の日本のスタジアム・アリーナのベンチマークになるようなものになってほしいなと。地域の方々、長寿や健康の促進などを含め様々な世代の方に楽しんでもらえる施設になればいいかなと思います。

――日本では「スタジアムをコミュニティに貸す」というのはよくあることですか?

羽生:先日も台風ですごく大きな被害が各地に出ましたが、東日本大震災の時に私たちが使っている味の素スタジアムも被災された方々の避難場所になったんです。スタジアムはシャワーや厨房もあって、暮らすことができるだけのインフラが整っています。だから多くの方を受け入れることができました。

渋谷もおそらく昼間人口のほうが夜の人口よりもすごく多いと思うので、たとえば首都直下型の地震が起きた時、絶対に皆さんの役に立つと思うんです。先ほど東京の土地の値段が高いという話がありましたけど、東京都には素晴らしい公園がたくさんあります。でもそういうところでは避難場所にならないんですよね。なぜなら建物がなくて雨風を防げるところがありません。

素晴らしいスタジアムがもっと都心にあって、そこが災害の際の避難場所になるという視点もすごく大切です。

――スタジアムが街のランドマークになることについてどう思います?

羽生:ランドマークたるべき、だと思うんですよね。ただそれも、人がたくさん集まらなければランドマークにはならないので、365日、どうやって皆さんに楽しんでいただけるような場所にするか。

私たちのクラブは今年(※2019年)50周年を迎えまして、次の50年、こういうクラブになるというメッセージを出しました。それは総合型スポーツクラブになりたいという意思表示です。

サッカーだけでなく他のスポーツ、そしてスポーツ以外の、たとえばヴェルディからミュージシャンが出てもいいですし、チェスのチャンピオンが出てもいいかもしれない。そういう色々な方が“ヴェルディブランド”で出ていけばいいなと思います。

多機能スタジアムが365日使えるようなクラブになれればなぁと。そういうことをしないと、隣のビッグクラブにはなかなか勝てないと思うので(笑)。

――(スタジアムの共用について)お互いのクラブの価値観を譲らないままでも、FC東京と東京ヴェルディだから「東京」をキーワードに一緒に考えるということですか?

大金:今も味の素スタジアムを一緒に使っているのでそこは変わらないかなと思います。新たに作るのであればやはり、お互いのクラブがもっと大きくなるようなスタジアムであってほしいですね。

ただ、今はまだFC東京がとか東京ヴェルディさんがというよりは、「渋谷にスタジアムを作ること」の難易度、高いハードルがあると思っているのでそこが一番重要ではないかなと思います。