私はゼルビアと付く前のFC町田でずっと育ってきた人間だったので、逆にゼルビアと付けたときに「付けなくていいんじゃないか」と、FC町田のOBとして思っていました。

実際にそういう声は当時から結構ありました。「Jクラブが愛称を付けているから付ける。FC町田がそこに乗る必要はあるのか?」と。そういった歴史があり、FC町田の歴史はファン・サポーターの方々もよくご存じで、理解を得られるであろうと思っていたんです。

また、「世界へ行こう」とクラブとして打ち出すなかで、東京や町田といった地名はやはりホームタウンを持つクラブとして世界に出していきたいのですが、愛称はあくまで愛称です。世界へ出ていくのであれば、愛称は後でも良いのではないか…。そんなことがいろいろあり、ゼルビアを取った名称にすることで藤田オーナーとも話をしました。

歴史を踏まえて説明すれば理解を得られると私は考えていたのですが、ゼルビアと付いてからファン・サポーターになられた方が圧倒的に多かったため、そういう方々にとってのマイナスのインパクトを汲めず、あのような場(サポーターミーティング)を作ってしまいました。

改めて、ファン・サポーターのゼルビアへの思いを知ることになり、懇親会等を含めファン・サポーターと直接会話する機会も増えたことは、クラブにとってプラスでしたし、ゼルビアの愛称も取らないことになりました。

今後は、逆に「東京と付けたら?」と言われるようなクラブになれるよう組織を大きくしていければと考えています。

――たしかに、ゼルビアと付いてからも20年以上が経ちました。『東京』を何かしらの形で入れたいという考えは今もあるのですか?

今のところはありません。そういう声が上がったときにもう一回検討してもいいかな、という感じです。

――海外の視点で見たときにチーム名に『東京』があったほうがいいということでしょうか?

スポンサーなど経営的な面と海外の視点ですね。「町田を世界へ」を掲げるなかで、東京と付いているほうがインパクトがある、であろうと。

選手もしかりですね。海外の選手にも東京のチームだとひと目で認識されたほうが、より行きたいと思ってもらえて交渉がしやすくなることもありますから。

経営的な側面と、その瞬間に想いを持って選手を後押しするファン・サポーターの気持ち。この二つがうまく融合することは簡単ではありません。今回のことを経て、ファン・サポーターとともに改めて進んでいくことになりましたので、経営なところは少し置いておいて、というようなところですかね。