きっかけは、主力の相次ぐ海外挑戦だ。

柴崎岳、植田直通、昌子源、安西幸輝、安部裕葵、鈴木優磨――。代表クラスの選手たちが海を渡るのはクラブ、サポーターにとって誇らしい反面、タレント力の低下は否めなかった。

2018年に悲願のアジア王者に輝いたとはいえ、翌2019年シーズンは無冠に終わった現実。

そして、絶対的な戦術を持たないゆえに、試合中に改善ができないと最後までリズムが掴めず押し負けてしまう姿も目に付くようになった。昨季の天皇杯決勝でヴィッセル神戸に良いところなく敗れた事実が、ある種の限界を物語っていた。

現状に危機感を覚えたであろうフロントは、政権交代に踏み切る。迎え入れたのは、ポゼッションスタイルを標榜するザーゴ監督だ。

新指揮官は、センターバックとボランチを中心としたビルドアップを重要な約束事とし、いかなる状況でもボールを繋いで崩す形を植え付けようと試みている。

ポゼッションスタイルは成熟まで時間が掛かるのが常ではあるが、これまでとは決定的に異なる戦術にトライし、選手間の相互理解が思うように進んでおらず、崩しの形を今ひとつ構築できていないことが、開幕から続く苦戦の理由である。