敗戦がベストマッチになる「特別なチーム」
西野監督が退任した直後にJ2降格に陥ったことを考えれば、攻撃サッカーは「G大阪の表看板」というより「西野監督の代名詞」のように思えなくもない。
西野監督は、「マイアミの奇跡」を起こしたアトランタ五輪やベスト16進出を果たしたロシアW杯でも指揮を執るなど、代表監督としても豊富な経験を持っている。
ベストマッチを挙げるとすれば、クラブでは2008年のクラブW杯準決勝のG大阪VSマンチェスター・ユナイテッド(3-5)、代表では2018年のロシアW杯決勝トーナメント1回戦の日本VSベルギー(2-3)になるだろう。
ブラジルに勝利し、G大阪や柏を率いてJリーグ歴代最多の270勝を挙げている指揮官なのに、ベストマッチが共に敗れた試合なのは皮肉かもしれない。しかし、どちらもその攻撃的なサッカーが持つ魅力を最大限に発揮し、日本にサッカーファンが相当数増えるような感動的で歴史に残る試合だった。
王国ブラジルを相手に守備に徹して勝利し、ハンガリーにも勝利しながらもグループリーグ敗退に終わったアトランタ五輪終了後、西野監督は日本サッカー協会から「保守的な戦い方」と低く評価された。
「超攻撃」を貫いたG大阪時代の西野監督は、「ガンバのサッカーは日本代表へのアンチテーゼだね」と口にしていたが、背景にはこれがあるのだろう。だからこそ、2018年のロシアW杯直前に西野監督が日本代表の指揮官に就任しただけで涙が流れたようなサッカーファンも多い。
そんな西野監督は「選手ありき」で戦術やシステムを決める。G大阪時代も[4-4-2]や[3-5-2]、[4-2-3-1]、オプションでは[3-4-2-1]も採用した。また、[4-4-2]のサイドMFに突破力に長けた佐々木勇人のような典型的なウイングを起用すると、選手交代だけで戦術自体に大きなアクセントがつくようなチーム作りや采配をしていた。