鳥栖版ポジショナルプレーと効果的な補強
近年の鳥栖はボールを保持してゲームの主導権を握ろうとする戦いを志向してきた。
ただスタイルを貫いているだけの一本調子なチームではない。相手や試合展開を見て、組織プレーを通して個人を活かす鳥栖独自のポジショナルプレーを披露している。
独自のプレーモデルが備わっているからこそ、J1最少の人件費でも補強は的確だ。例えば、DFジエゴとFW垣田裕暉、宮代大聖という昨季はJ1の徳島ヴォルティスでプレーした3選手を獲得したことには目を見張る。
(川崎フロンターレのユースが育成した“大器”宮代大聖)
徳島はリカルド・ロドリゲス(現・浦和レッズ監督)と現指揮官ダニエル・ポヤトスのスペイン人監督が2代続き、鳥栖と同じくクラブ独自のゲームモデルが定着してきたクラブだ。
また、バルセロナのアカデミー部長の言葉からヒントを得た元日本代表監督の岡田武史氏がオーナーを務め、独自の『岡田メソッド』の体現を目指すFC今治からDF原田を獲得し、出戻り組の藤田や福田、小野裕二の3選手を復帰させたのも賢明だ。
また、鳥栖では天才肌のボールプレイヤーたちを組織的な攻撃サッカーの中で輝かせることが可能だ。
彼等は守備意識の希薄さを露呈したり、同タイプとの併用を敬遠されがちだが、サッカーセンス抜群な彼等は相手のパスワークの妙を読むセンスにも長けている。それを鳥栖自慢の運動量と組み合わせることで守備でも大きな武器になる。
(2020シーズンにJ2で17ゴールを記録した垣田裕暉)
小柄な選手が多いために中盤でのプレスからのボール奪取を前提に守備戦術を組み立てないといけない縛りがあるが、それがそのまま鳥栖独自のゲームモデルとなっており、整合性もとれている。
札幌戦では出番がなかった堀米勇輝や菊地泰智といった今季新加入の技巧派MFは、昨季の小屋松や仙頭、樋口や白崎に続き、開幕から同時起用されながらも安定したプレーを披露する今季のブレイク候補だ。