激動の今シーズンと渡邉監督のチームづくり

今シーズンのモンテディオ山形は、文字通り激動のシーズンを過ごした。

開幕2連勝と幸先の良いスタートを切ったが、第3節・ジュビロ磐田戦で今季初黒星を喫すると、ここから5連敗。クラブは第7節・水戸ホーリーホック戦後にピーター・クラモフスキー氏の契約解除および渡邉晋コーチの監督就任を発表した。

渡邉体制になっても連敗は止まらず、最終的に8連敗。第10節終了時点でJ3降格圏の21位に沈み、この段階ではJ1昇格プレーオフ進出はおろか、ひと桁順位でのフィニッシュも考えられない状況だった。

その後3度の5連勝を達成するなど巻き返し、最終的に5位でプレーオフ進出を決めたが、良くも悪くも好不調の波が激しいのが山形だ。

今季2度目の5連勝を飾った第31節・ロアッソ熊本戦後にプレーオフ圏内の6位に浮上したが、翌節のFC町田ゼルビア戦で5失点の大敗。第34節の清水エスパルス戦も0-3で落とし、11位へ後退した。

通常ならこの時点でプレーオフ進出が厳しくなるはずだが、逆境に強いのも山形だ。第38節・栃木SC戦からの4連勝で望みをつなぐと、最終節のヴァンフォーレ甲府戦をデラトーレの劇的逆転弾(ゴールシーンは下記動画)でモノにし、今季3度目の5連勝。最終節の勝利でプレーオフ進出を決定させたのは、昨季と同じ展開だった。

では、なぜ山形は好不調の波が激しいのか。大きな要因は、渡邉監督の「攻撃に特化したチームづくり」にある。

攻撃的スタイルを標榜する渡邉監督のベースは、ビルドアップから崩す形だ。センターバックとボランチを軸としたパス交換でリズムを作り、そこから素早く前線のアタッカーたち(特に両ウィング)へ展開して、一気に相手ゴールへ迫っていく。

ビルドアップはあくまでもアタッカーに良い形でボールを供給するための手段に過ぎず、「相手ゴール前でどれだけチャンスを作れるか」という点に主眼が置かれている。

そして、相手がビルドアップを分断しようとハイプレスを仕掛けてくれば、その分敵陣にスペースが生じる。打開力に優れる山形の両ウィングがスペースを謳歌することで、ゴールの可能性は高まる。ビルドアップは「相手のハイプレスを誘発する餌」とも言えよう。

一方、ビルドアップから素早く前線へ展開して攻撃を完結させるため、攻守の入れ替えは激しくなる。つまり、「自分たちにチャンスがある分、相手にもチャンスがある」状況になるため、失点のリスクも高まるのだ。

山形が今季記録した引き分けは、42試合でわずか4(※21勝4分17敗)。この数字はもちろんリーグ最少だ。

勝ち負けがハッキリしているのは、攻守の入れ替えが激しい点がやはり影響している。渡邉監督が敢えて攻撃に特化している理由については、後ほど詳しく述べたい。