清水との大一番は「前半勝負」の予感大

冒頭で触れた通り、リーグ戦5位の山形がJ1昇格プレーオフ準決勝で戦うのは、4位・清水エスパルスだ。

昇格プレーオフは、「引き分けの場合はリーグ戦年間順位が上位のクラブを勝者とする」レギュレーション。つまり、準決勝で山形が勝ち抜けるには、勝利が絶対条件となる。

今季の清水は、途中就任の秋葉忠宏監督がチームを立て直して上位争いを展開。最終節の引き分けにより自動昇格を逃したが、タレント力はリーグ屈指だ。最終節から約2週間空き、自動昇格を逃したショックからもある程度脱却していることが予想される。

勝利が絶対条件の山形は、相手より多くゴールを奪う必要があるが、そもそも攻撃に特化しているだけに、「勝つしかない状況」はある意味追い風と言える。

もちろん、「引き分けでもOK」かつホームで戦える清水が有利なのは間違いない。山形としては、少しでも早い時間帯に得点することがマストとなる。なぜなら、清水は試合途中で基本システムの<4-2-3-1>から<3-4-2-1>に切り替えるからだ。

清水が3バック(実質5バック)へシフトするのは、後半開始または後半途中のタイミングだ。しかし、最終節の水戸戦では選手たちの自主的な判断により、前半途中から<3-4-2-1>へ移行している。

打開力に優れる山形の両ウィングを封じるために、水戸戦のように前半途中から3バックへ切り替える可能性は十分ある。守備時に<5-4-1>となり、サイドを手厚くケアできる<3-4-2-1>を崩すのは難しい。「引き分けでもOK」というマインドが決断を早くさせるかもしれない。

山形としては、清水が3バックへシフトする前にゴールを奪いたい。先制点が試合のゆくえを大きく左右するに違いなく、前半が勝負になるだろう。

ただ、清水が3バックへ移行しても、得点の可能性が潰える訳ではない。朗報は、攻撃陣が軒並み好調を維持している点。交代出場で流れを変える高橋潤哉、チアゴ・アウベス(または宮城天)、デラトーレの存在は脅威である。

そして、アタッカーたちと同じくキーマンになるのが、指揮官が全幅の信頼を寄せる司令塔・南秀仁だ。

在籍7年目を迎えた背番号18は、気の利いたポジショニングが光る。ビルドアップでは両センターバックの間または横に落ちてポゼッションの潤滑油となりつつ、時に思い切りの良い攻め上がりで攻撃に厚みをもたらす。

最終節の甲府戦では、ペナルティーエリア内へ巧みに侵入してデラトーレの劇的逆転弾をアシスト。元々は攻撃的なプレーヤーだったこともあり、攻撃センスはやはり素晴らしい。清水が構えて守るのであれば、南の攻撃参加が崩しのカギを握りそうだ。