「今後の目標は日本代表」

愛媛での2年間でリーグ72試合に出場して2ゴール8アシストを記録した長沼は2021年、3年半に渡った武者修行から古巣・広島に復帰。しかし、当時の広島は監督交代が短期間で2度起きる過渡期。J1経験のない長沼には十分なチャンスが与えられなかった。

2021年6月には当時の広島の本拠地・エディオンスタジアム広島で開催された天皇杯2回戦で関西リーグ1部・おこしやす京都AC(※現在は関西2部)相手に先発出場するも慣れない3バックの左DFを担当して1-5の大敗を喫するなど、少ないチャンスも生かせなかった。

「日本が2022年のカタールW杯でドイツやスペインを下したように、天皇杯でもジャイアントキリングは何度も起きています。あの試合は負け方も良くなかったので、そのあとも悔しかったですけど、そこまで引き摺りはしなかったです」

――ただその後、鳥栖へ移籍するまでの約1年間は出場機会が少ない時間が続きました。

「確かにメンバー外になることも多かったんですが、『出ればやれる』とは思っていましたし、『今はそういう時期だ』と捉えて、試合に出られない時期だからこそ、やれることをやろうと考えて準備をしていました。

そう思えるのも、世代別の代表や移籍を経験したことで、いろんな選手を見て来たことにもあります。やっぱり、日本代表へ入るような選手やプロの世界で長くプレーする選手はメンタルの部分が優れていて、ピッチを離れても意識が高く、いかに準備することが大切なのかを見てきました。

メンタル面や身体のケア、肉体改造にまつわる様々なトレーニングを取り入れたり、自分のプレーや相手チームの分析なども準備のひとつだと思いますね。

そういう時間があったからこその現在でもあると思っているので、腐ったり、心が折れるようなことは全くありませんでした。だからこそ、2022年の夏に完全移籍で鳥栖へやってきた時にも、すぐに試合に出て結果を残すことができたと考えています」

――それでは最後に今年の目標を教えてください。

「チームとしてはもっともっと良いサッカーができるように、自分自身もチームの勝利に貢献できるように、と考えることで今は頭がいっぱいですね。今はまず、鳥栖のためになることを精一杯やっていきたいと考えています。

個人としては去年10点取れたので、今年も二桁は取りたいと考えています。結果を出し続けることで日本代表に入るチャンスもまだあると考えています。

鳥栖からは2022年にFW岩崎悠人くん(現アビスパ福岡)も招集されました。国内組限定の編成時でも良いので、まずは日本代表に入ることを目指してやっていきたいと思います」

サガン鳥栖は「ここから這い上がれる」

※サガン鳥栖公式YouTubeより(動画3分5秒から)

今季から背番号を24から88に変更した理由を、「元々8番が好きだったんですが、サポーターからの人気が高い本田風智選手(今季から10番)が着けたすぐあとに着けたくなかったので、8を並べて88にしました」と答えるなど、明るいキャラクターをもつ長沼。

筆者が昨季挙げた10ゴールのうち先制点が8つあったことを伝え、「契約更新の際に金額を上げる材料に使ってください。100万円くらいは上がるかも」と冗談を飛ばすと、広報スタッフを見ながら、「もっと行くでしょう!先制点は大事ですからね!もっともっと~!!(広報さん:苦笑い)」と返して来るようなコミュニケーション力に長けた人間性も魅力だ。

今季の鳥栖は開幕から低迷してきたが、ここへ来て川井監督体制初の連勝。毎年のようにチーム人件費がJ1最少クラスのチームには長沼のようにJ2でも出番に恵まれなかったり、J3経験しかないような挫折を経て這い上がって来た選手が多い。

5月15日、Jリーグは31歳の誕生日を迎えた。32年目のシーズンを迎えた今季、鹿島アントラーズと横浜F・マリノスが未だに1度も降格を経験していないことは有名だが、「オリジナル10」以外の後発のクラブでJ1に昇格して以降、1度も降格を経験していないクラブが1つだけある。2012年からJ1を舞台にして戦うサガン鳥栖だ。

やりくり上手でW杯出場選手も!サガン鳥栖、「歴史上最強の日本人選手」5名

サガン鳥栖はここから這い上がる!

サポーターの夢を乗せて、明るく元気な長沼がどこまでも走り続ける!

【プロフィール】

長沼 洋一(ながぬま よういち)

1997年4月14日生まれ(27歳)
178cm/70kg
山梨県甲府市出身
ポジション:GK以外全てを経験

高校から名門サンフレッチェ広島ユースに“越境”。2016年にトップ昇格したものの、4年で3度のJ1制覇を果たした黄金期の広島では出場機会を掴めず。2017年8月からはモンテディオ山形(J2)、2018年にはFC岐阜(J2)、2019年からの2年間は愛媛FC(J2)へと期限付き移籍。約3年半に渡る武者修行を経た2021年に広島へ復帰するも出番は少なく、2022年7月にサガン鳥栖(J1)へ完全移籍した。2023年には10ゴールを挙げてブレイク。今季もウイングやSBを両サイド遜色なくこなし、公式戦全試合に出場中。両足から繰り出すミドルシュートや意外性のあるヘディング、抜群のスピードで攻守におけるデュエルでの強さも武器とし、ポジションもプレースタイルもオールラウンドな魅力が際立っている。

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