2度のアジアの決戦で得た経験

筑波大でルーキーながら主力として結果を出してきたストライカーは、世代別代表でも別格のプレーを披露した。昨年9月から10月にかけて中国で開催されたアジア大会では、5試合4得点の活躍で大会準優勝の原動力となった。

その活躍もあってパリ五輪最終予選となるAFC U-23アジアカップに臨むメンバーにも選出され、準々決勝カタール戦で得点を挙げた。同大会では出場機会に苦しむも、少ない出場時間で結果を挙げる活躍で五輪入りに向けてアピールした。内野がアジアの激戦を振り返った。

――昨年のアジア大会では4ゴールを決めて、今年春に行われたU-23アジアカップも数試合に出場してパリ五輪出場権獲得に貢献しました。アジア大会は内野選手にとってどんな大会でしたか。

アジア大会はすごく大きかったと思っています。ちょっと言い方は大袈裟かもしれないですけど、自分の分岐点になったかなという印象があります。

――どういった分岐点になりましたか。

自分たちの代の代表がないというか、自分たち(2004年生まれ)はパリの1番下の世代です。自分たちが世代別に入るにはU-23の代表の代に入らないといけないというのがありました。

そこまではオリンピックにもちろん出たいと思っていましたけど、ちょっとさすがに厳しいな、可能性も低いなという思いがありました。

その中でアジア大会に呼んでいただけたときは「ここでなにかを残せば、もしかしたらワンチャンスあるのかな」という気持ちでした。

――アジア大会は山内翔選手とも一緒でしたけど、山内選手の存在は大きかったですか。

大きかったですね。自分はアジア大会も追加招集だったので、周りの選手もほぼ知らなかったです。同い年の選手もいなかったので、翔くんがそこでも良くしてくれて(選手の紹介、橋渡しなど)すごく助かりました。

――アジア大会、U-23アジアカップには多くのプロ選手が参加していました。大会でプロ選手と交流して見えた景色や感じたものがあれば教えてください。

プレースピードや判断の早さが全然違って戸惑うところもありましたけど、日が経つにつれて慣れていって少しずつ自分の良さも出せていけた。「早くプロでやりたいな」という思いはありました。

――チームメイトの意外な一面は見られましたか。

松木選手が良くしてくれたんですけど、松木選手はゲームしかしていなかったですね(笑)。

『荒野行動』をめちゃくちゃやっていましたし、一緒にやっていました(笑)。

U-23アジアカップで仲を深めた松木(右)と内野

――ゲームなどを通じて距離が近くなりましたか。

そうですね。何個かグループが分かれていたんですけど、それもあって良くしてくれたかなと思います(笑)。

――大会で4ゴールを取れた結果についてどう評価していますか。

FWにケガ人が多くて、追加招集で行ってすぐ「スタメンだぞ」という感じでした。

もちろん不安もありましたけど、失うものがなにもなかったので、思いっ切りやってやろうというところで初戦で点を取れたところが滅茶苦茶大きかったと思います。

――あとゴールパフォーマンスがめっちゃ楽しそうですね(笑)。

そうですね。『進撃の巨人』の“心臓を捧げるポーズ”をやっています(笑)。

心臓を捧げるポーズを取る内野(右端)この取材でこの話題が出たとき最も笑顔を見せていた

――なんでそのポーズを採用したんですか。

結構くだらないんですけど、先輩が『進撃の巨人』をちょうど見ていて、なんか「進撃の巨人が面白いからお前も見ろよ」と言われて見始めてハマって(笑)。

その先輩が「次点を取ったらこれやろうぜ」みたいな軽い感じで言ってきました。その週に点を取ったので、その先輩と一緒にパフォーマンスをしてからはずっと定着しているのでやっています(笑)。

(アジア大会でも)やっていました。もう結構定着しましたね。

――決勝では韓国と対戦しました。PSGのイ・ガンインらと対戦して世界との差を体感しましたか。

めちゃめちゃ強いなと思いました。同世代のトップクラスの選手だと思うので、そういった選手とあそこでやれたことは自分の中の物差しを作るうえですごく良かったと思います。

アジアで圧倒的な実力を見せつけたイ・ガンイン

――大会から逆算して、その差を埋めるためにはどういった努力をすればいいと考えていますか。

個の技術や個の怖さが1番大事だと思います。

――ゴール前の部分ですか。

ゴールに持っていく過程もそうですし、ゴールの取り方や自分の良さのところも大事だと思うんですけど、独力ではがす力もすごく大事だと思います。

――例えばズラタン・イブラヒモヴィッチや、Jリーグでいうと大迫勇也選手みたいにちょっと下がってチャンスメークするプレーなどもアイディアにありますか。

そうですね。求められるところだと思うので、そこもやっていかないといけないと思っています。

――U-23アジアカップは出場時間が短くて個人的には悔しかったと思うんですけど、振り返っていかがでしたか。

まずメンバーに入れたときに驚きました。だけど選手を見ていても短い時間での使われ方をするのは想定内だったというか、出た時間でどう自分の良さを出すかが大切だったかなと思います。

――あの大会を通じて得た成長などがあれば教えてください。

出場時間が短かったですけど、腐らずにやれたことは良かったと思います。緊張感がいままで経験してきた舞台と全然違ったので、そういった面でのメンタル面の成長が1番大きいかなと思います。