横浜FCでの日々
インタビュー中、ヤリクさんの口から度々『日本の家族』である横浜FCの人々について語られた。取材を通じ、横浜FCでの生活を楽しそうに振り返るヤリクさんの様子は、最も印象的な場面だった。
誰に言われるまでもなく、横浜FCの選手やコーチは異国の地で挑戦を続けるヤリクさんを自らの意思で手助けしているという。そうした人々の優しさが、ヤリクさんにとっては心の支えとなっている。
──Jリーグで好きな選手、チームはありますか。
「もちろん、横浜FCは一番よく知っているチームです。あとはスベンド・ブローダーセンさん(J2ファジアーノ岡山のGK)のような、横浜FCに以前所属していた選手たちがいるチームをよく見ています。
J2やJ3も含め、日本のリーグのニュースは毎日チェックしています」
──ブローダーセン選手と仲がいいのですか。
「ブローダーセンさんはロシア語を喋られるので、たくさんサポートをしてもらいました。彼のおかげで安心することも出来ましたし、いろんなことも分かりました。
同じチーム、ポジション、考えの選手がロシア語を喋ることができたのは本当に良かったです。
トップチームではブローダーセンさんは『兄貴』、日本のお兄ちゃんでしたね」
──ブローダーセン選手は岡山に今季移籍してしまいました。
「寂しい(日本語)」
──ほかに仲がいい選手はいますか。
「練習を一緒にしたとき、私のスパイクがボロボロになっていたのを見かけて、最初に声をかけてくれたのがシオン(MF井上潮音)で、新しいスパイクを持ってきてくれました。
それ以降は中村さんがいつもスパイクをくれます。『潮音が(スパイクを)あげたから、私もあげるよ』と(笑)。
潮音はすごく優しくて、すぐに友達になりました。スペインから戻ったとき、潮音に会ったら、すごく喜んでくれてすごく嬉しい気持ちになりました。
僕が戻ってきてみんなが喜んでくれると思っていなかったので驚きました。
ほかの選手も、監督の四方田さんもみんな『大丈夫?』、『家族は元気?』、『ウクライナは大丈夫?』と声をかけてくれます。 そういった一言、一言が、私にとってはとてもありがたいです」
──横浜FCに伝えたいことをお願いします。
「横浜FCにはチャンスをいただき、プロとしてのやり方も教わったのですごく感謝しています。
プロの仲間に入れてもらい、一緒にプレーできたことがすごく大きな財産です。
中村さんはいまでもサポートをしてくださり、スパイクをプレゼントしてくれる。
そういったところは横浜FCの人たちに『ありがとう』と伝えたいです」
幾多の困難を超えて、日本から世界の頂点を目指すヤリクさん。異国の地で受け入れてくれた国の『新たな家族』にも後押しされ、Jリーグ、そして世界のゴールマウスを守っていく。