1.前線のフェライニ

サー・アレックス・ファーガソンの勇退から2年近くが経つ。私にとってこの男の獲得オペレーションは、昨年のデイリー・ブリンドのそれに次ぐ、お気に入りの瞬間であった。

しかし、ここで私が問いたいのは、タイトル通り“前線での起用"の価値である。

ゲーム終盤のパワープレーという、あくまで“オプションの1つ"という位置づけ(ウェイン・ルーニーの中盤起用もその程度が理想)に関して異論はない。しかし、激しさと確たるインテンシティを失った中盤センター、もしくは中盤の底こそ、彼の真の居場所だと私は今も考えている。

強い足腰とタックル、粗さはあるものの闘争心をむき出しにしたスタイルこそ、イーブンな中盤のボール、今のユナイテッドに明らかに欠ける球際の戦いを制するに打ってつけの武器ではないか(フランシス・コクラン復帰後のアーセナルを見ても、その必要性は明らかであろう)。多少インテリジェンスを欠いたプレーはご愛嬌として、彼とマイケル・キャリックやブリンドのペアが、なぜここまで多く見られないのか。

加えて、彼の前線での仕事ぶりにも私は違和感を覚えている。

彼がフォワードないしアタッカーとして機能しているシーンなど、リーグ戦ではほとんど目にしていない。“ロングボール・ユナイテッド(私はごもっともだと思う)"と揶揄され、それに噛みついて記者会見にデータを用意するほどその名を嫌ったファン・ハール。フェライニを前で使う意図は他にあるのだろうか。いわゆる“1.5"のポジションで使うのであれば、彼にそれほどのアイデアと技術があるだろうか。そもそも彼はシーズンでいくつゴールを上げたのか。

なぜマルアン・フェライニが敵のバックライン付近でプレッシャーをかけているのか。ボールと人には触れず、プレッシャーをかけることが、ここ数か月の彼に与えられた守備のタスクだ。

敵のロングボールにことごとく反応し、ユナイテッドの支配に変えてしまう。その意味での“ロングボール・ユナイテッド"のために、フェライニはチームにいるのだと私は思ってしまう。

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