バルセロナの最大の育成は、「環境を与えること」

――海外のトップレベルでは化物クラスの選手が時折出てきますが、日本とは何が違いますか?

草木:ユースまでは日本もそこそこ強い。でもその先のリーグが違う。香川がユナイテッドに行った時、代表に帰ってきて普通にやってたからね。代表クラスよりもプレッシャーが強い場所なんやと。だから、子供はそこに入った時に大きく伸びると思う。

――そこに早く触れることが大事?

草木:大事やと思う。久保建英くん(FC東京)も普通にやっとると思うね。「こんなん止まって見えるで」と。サッカーを知ってる。ここで切り返したらディフェンスがこっちに寄ってくるからここが空くとか。駆け引きも覚えている。きっとあっちでバチバチやられてたんやと思うよ。

――日本にはまだ「自国の形」がないとも言われますね。

草木:ないね。ガーンと行ってボーンと行けみたいなころから変わってどうなるかと見てきたけども。

僕はバルセロナに一ヶ月留学してたんやけどね。バルセロナは施設にしてもまあ裕福やわ。子供の試合も見たけど、カテゴリが変わってもシステムは全部一緒。メッシが絶対におる。なられへん奴は弾かれる。

それを取ってくるために70人のスカウトをスペイン全土に配置してる。そしてメッシらしいやつを連れてくる。

――それがピラミッドを作っていくんですね。

草木:彼らに聞いたら「我々は環境を与えるだけ」と。1人のメッシを育てるために19人をお付きにする。その中で伸びると。

宇佐美は3人で囲んだら防げる。メッシは3人で囲んでも止められん。そこへの血液の流れを止めなきゃならん。ところがそれが止められへん(笑)。

――周りの選手もスゴイですからね。

草木:見に行った時、守備してたのプジョルだけやった。「誰も守備してへんぞ」と聞いたら「いや、守備はこういうふうに考えている」て偉そうに言いよんねんけど(笑)。

でもバイエルン・ミュンヘンにしても、ロッベンの負担を減らすための作業はやってるからね。必ずシュートで終わるとか。ミドルシュートの確率が100%というデータが出た試合もあった。100%枠内に行く。撃たせたら危ないから、取りに行く。そうなると隙が出来る。ロングボールの成功率も70%と。

――バルセロナも「才能を見つけてプレーさせる」方針なんですね。

草木:C級くらいのレクチャーはしてるけどね。「ここ、もうちょいこうしたほうがええんちゃうかなー」とか思いながら見てた。それで話したら、めっちゃ偉そうに上から言われるんやけど(笑)。

――しかし、その中でも凄い選手が出てくる。

草木:だから環境やね。後はリーグ。

日本は学歴社会があったり、少子化があったり、外遊びが減ったり、足を引っ張るものは多いよね。今の就職戦線と同じで、質の高い子は色々なところから声がかかる。選択肢がいっぱいある。「こいつもっとサッカーやったらええのに」と思っても、その子は他に選択肢を持ってる傾向にあるんちゃうかな。

――また、日本にはサッカー文化が根付いてない話もあります。

草木:根付いてないね。

松本:根付かないでしょうね。娯楽が多すぎますし。

草木:サッカーをやれる場所が少なすぎる。日本の公園は観賞用で、「芝生立ち入り禁止」ってありえへんやん。何のための芝生やと。

――ボールを蹴っただけで怒られますからね。

草木:小学校でボール蹴ったらあかんとかね。僕らは人がいっぱいおるところで蹴ってたからうまくなった。当てへんように蹴るから。制限をしてるよね。僕らは5分の休み時間にシュート板に蹴って、急いで帰ってきたからね。今はそんな子おらん。週二回は塾やし(笑)。

――スクールに入らないとサッカーできないみたいな。

草木:スポーツと教育が同時に学べるようなものがメジャーにならなあかんね。昔は相撲と野球で、今はそこにサッカーが徐々に浸透はしているけど、環境は整えへん。

グランドももっと多くてええしね。子どもたちが自分らでルールを決めて遊べるような場所が。

【次ページ】日本の子供に今、必要とされているもの