しかし、何事にも長所があれば短所もある。弱点の無いものなどないものだ。
それでは、最後に“バネガ落とし"の課題について触れてみたい。
1.フィルターの掛からない“バネガ落とし"によるバネガのピボーテ
バネガの守備力を計算に入れるのは難しい。そのため、クリーンなディフェンスでボールを奪うのは困難と言える。それだけイエローカードを貰う頻度が増すということになるだろう。
勿論、それはカウンター時に後方で控えているクリホヴィアク+2CBの3枚の最終ラインへの負担を表すことになる。
バネガの陰に隠れてしまってベンチからの出場が増えているのが、デニス・スアレスとの併用についても触れよう。
ボール循環の流れを変える時やバネガが落ちて、代わりにトップ下のように振る舞える選手が欲しい時に、デニス・スアレスは投入されている印象がある。デニス・スアレスは狭いスペースで息の出来る選手だ。バイタルエリア付近まで上がったエムビアやイボーラよりも小回りが利く上に、ドリブルやパスで相手を剥がすことが出来る。出し手或いは受け手にも状況次第では化けられるクオリティを持つ。
ボール回しの中心はあくまでもバネガ。デニス・スアレスをトップ下に入れて、バネガをピボーテにハッキリと落とす。そのエメリの采配に疑問が生まれたのは第24節のレアル・ソシエダ戦である。
当然、ボールを保持して押し込んだ際にピボーテのバネガのところが浮く。相手からのプレッシャーの掛かり難い状況である。自然とボールはバネガに集まる。
元々はトップ下の選手なので、スルーパスといったラストパスやキーパスを繰り出すことが見受けられた。リスクの高いパスなので失敗する。ディフェンダーとして、そのスペースに居るだけで寄せきれない守備をするバネガのディフェンスは無力に近い。所謂アリバイ守備である。そうなると自然とピボーテの位置でフィルターが掛からない。当然のように綺麗にカウンターを貰う場面があった。
パス出しのタイミング、出し手としてのセンス、デニス・スアレスとの噛み合わせ。
これらを考えるとバネガをピボーテの位置で起用すれば、ボールがスムーズに回り、相手にとって危険なパスを出すことは容易と考えるのは至極当然である。しかし、バネガはパスミスやキックミスでボールを失うことがある。そこのリスク管理に対して、ラインを下げさせて相手を押し込めば大丈夫だろうといったものでしかなく、守備面での計算を疎かにしている印象は否めなかった(ソシエダ戦ではクリホヴィアクは欠場)。
パスの種類もピボーテのクリホヴィアクの構えたところからによる散らしとは違って、バネガは基本的にパス&ムーブのトップ下のようなノリのパスが多い。その剥がす小回りの利いた動きをピボーテの位置でやることに意味があるのだろう。しかし、自分の背後には最終ラインしかないという状況を踏まえているのか疑問が生まれたのである。
そういった事も踏まえてのセビージャ全体の敵陣地内でのアグレッシブなプレッシングであることには違いないが、バネガのピボーテ起用のリスクを垣間見た気がする一戦となった。