16日に行われたオーストリア2部リーグの試合で、FCリーフェリンクに所属する奥川雅也が2アシストを記録した。

10チーム中8位に沈む相手で、敵地とはいえ非常に小さな会場であったが、試合はただならぬ熱狂的な雰囲気に包まれていた。そこには決して譲れない意地とプライドのぶつかり合いがあったのである。

サッカー界の変革を狙うレッドブルグループ

南野拓実が在籍し、FCリーフェリンクに奥川雅也を貸し出しているレッドブル・ザルツブルク。

その所有者であるレッドブルは1980年代半ばにオーストリアで創設された世界有数の飲料メイカーで、彼らは豊富な資金力と知名度を背景に各業界に参入してきた。先月、セレッソ大阪とパートナーシップ契約を結んだことは記憶に新しいが、今世紀に入ってからはサッカー界への投資を積極的に行っている。

その第一歩となったのがお膝元SVアウストリア・ザルツブルクの買収だ。

1933年創設のSVアウストリア・ザルツブルクはリーグ優勝3回を誇る強豪クラブだったが、1990年代後半以降は低迷。そのさなかの2005年にレッドブルが買収しチームを一新すると、それから10年で6度の優勝と短期間に国内最強のクラブへと変貌を遂げたのである。

大躍進の原動力はもちろん質の高い外国人選手の加入で、宮本恒靖、三都主アレサンドロもその過程の初期に獲得されたものだった。

レッドブル時代の宮本のユニフォーム

レッドブルグループの方針は良し悪しは別として一貫している。買収した全てのクラブにほぼ同じエンブレム、ユニフォームを使用(強要ともいう)し、レッドブルカラーを全面に押し出しているのだ。

慈善事業ではないのだから当然といえば当然かもしれない。しかしクラブが積み重ねてきた歴史・伝統を一顧だにしない姿勢はやはりサポーターの猛反発を招く。

ザルツブルクの場合は両者の協議が物別れに終わったため、2005年10月、元々の伝統を継承したSVアウストリア・ザルツブルクがレッドブルとは別に誕生することになった。

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