ロールモデル

私は、基本的にどんなナショナルチームも、主要リーグ1部レベルのクラブには敵わない、という考えを昔から持っている(例外を問われればセレソンの名を答えるが)。

それはチームとして共にする時間によるところが大きいが、近年のバルセロナに手を加えたスペイン代表や、バイエルン・ミュンヘンをベースとしたドイツ代表の手にした成功をみれば下手な説明は不要であろう。

では、イングランド代表はこの夏にモデルとすべきクラブはあるのか。

このセオリーを仮に正義とすると、率直に言ってレスターはこの項目には該当しない、というのが私の考えである。

このイングランドフットボール史上最大のサクセスチーム候補の旗手を共に担った、リヤド・マフレズとエンゴロ・カンテに替わる存在は、残念ながらロイ・ホジソンの手駒の中には見当たらない(ジェームス・ミルナーが黒子に徹したとしても、マフレズの替えはいないだろう。このタスクを全う出来得るタレントは潜在的には“健康な”ファビアン・デルフのみだが…)。そして、キャストの数を見ても、代表に入れる可能性があるイングランド人は2~3人といったところだろう。

よって、私はリヴァプールかトッテナムという2つをまず候補としたい。

共にシーズンでは4-2-3-1のシステムを主に採用しているが、先述の「縦へのスピード」に関しては申し分のないものを持っている。加えて、この代表に絶対に欠かせないピースがハリー・ケインとジョーダン・ヘンダーソンの2名であることも付け加えておこう。

ただ、どちらかを選択するとなればやはりスパーズを推したい。理由はここでも“スピード”である。

過去・現在を問わず、ウイングポジションにスピード豊かなアタッカーを据えることは、プレーにダイナミズムを加え、相手を押し込む圧力を加えるというのが定説だ。

不振のマンチェスター・ユナイテッドの指揮官が最も欲す要素であり(ではなぜ、あれほどの大金を使う際に獲得しなかったのか?というこの“言い訳”に対する指摘は置いておこう)、ペップも開幕前にこの要素をポゼッションフットボールの“最終局面”におけるエッセンスとして補強を行った(当然ドウグラス・コスタとキングスレイ・コマンはアリアンツ・アレーナでのキャリアを謳歌している)。

しかしながら、イングランド代表には彼らに相当する“トップレベルの”高速ウインガーはラヒーム・スターリングを除いて見当たらない。

アレックス・オックスレイド=チェンバレンやセオ・ウォルコットは今年も“ブレイク(ウォルコットにもあえてこの言葉を選ぶ)”したとは言い難く、アンドロス・タウンゼントやジョーダン・アイブ、ウィルフリード・ザハも、意味合いは違えど「もう一息」が確実に足りていないように見てとれる。

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