“答え”がないフラッシュインタビュー

――リポーターのお仕事となると取材対象の多くが監督になると思います。

上門選手のように有馬監督から色んなお話を伺って来た私は、退任されたのがショックでした。大好きだったので今年からコーチをされている広島の試合をよく観るぐらいです。

有馬監督はファジの監督に就任する前、U15からU17に相当する育成年代の日本代表監督をされていて、鹿島アントラーズの荒木遼太郎選手、サガン鳥栖の中野伸哉選手やモンテディオ山形の半田陸選手など現在Jリーグで注目を浴びる選手を呼んで指導されていました。

上門選手とのやり取りなども一例で、何よりも選手のことを真剣に考えている人なので、選手個々の育成にも長けた方だと思います。

そして、試合後のインタビューでサポーターさんへのメッセージをいただく時、それまでは厳しい表情をしていても一気に和やかな笑顔を見せる姿が素敵なんです。

それを私は1人で間近で聞いてるので嬉しくなりました。あれは私に向けて言ってるんだって勝手に思っていて、思わずキュンとしてしまいます(笑)。

ファジアーノ時代の有馬賢二氏

――今季就任された木山監督とはどうですか?

その有馬さんと現在の木山監督は現役時代に札幌で一緒にプレーされていて、その頃からお互いに[きーやん]、[ケンちゃん]と呼び合うほど仲の良いお2人なんです。

だから勝手に親近感が湧いて、木山監督の取材がスムーズになりました。木山監督には私が質問すると、『どう思う?』と逆質問されることも多いので、頭をフル回転させながらの取材は今までになく楽しいですよ。

私が何事に関しても深堀したいのもあって、『具体的に』っていう言葉をよく使ってるんですけど、『具体的にって好きだよね?』ってツッコミを入れてくるようなフランクな一面も持つ方ですね。

アウェイ戦で他のリポーターさんが『具体的に』っていう言葉を入れて質問されたことがあった時、木山監督が『具体的にってよく言われるんですけど』と前置きをしたことがあって・・『あっ・・私だ』って思っちゃいましたね(笑)。

『これで分かる?俺、ちゃんと具体的に言えてる?』と完全にネタのようになってますけど、いつも良い雰囲気のなかでお話いただいています。

サッカー大好きな私は当初、選手インタビューが好きだったんですけど、今は監督との話のやり取りが毎回楽しくて、それが好きでよく練習場まで取材に行ってますね。

――外国籍監督の場合はどんな感じなのですか?

現在J1の浦和レッズを率いるリカルド・ロドリゲス監督には徳島ヴォルティス時代にインタビューさせていただきました。リカルド監督は外国籍監督の中では1番クールで落ち着いている印象です。

昨年まで2年、新潟を指揮されたFC東京のアルベル・プッチ・オルトネダ監督は登録名が『アルベルト』だったんですが、『アルベルって呼ぶとすごく喜びますよ』と広報さんから伺って、『アルベル監督』と呼ぶとメチャクチャ良い反応をしていただきました。

インタビューも終始和やかな雰囲気で、最後に『移籍市場が閉まりましたけど、来年からウチのリポーターに来てください』とオファーもいただきました(笑)。

この2人のスペイン人監督さんも現在はJ1のクラブで指揮されているので、個人昇格は今や選手だけでなく監督にもあるのがJ2の実情です。

――リポーターさんにとって試合終了直後のフラッシュインタビューは、ゴール前の場面のようなものです。”決定力”が問われますが、良いインタビューをするために心掛けていることは?

まず、担当が決まったらファジの対戦相手の試合を直近3試合分は観て、メンバーやフォーメーションの変化、得点パターンなどを整理して情報として用意します。

それと同時にインタビューの部分を注視して他のリポーターさんの質問も研究します。『この選手はこういう質問をすると、こういう表情をしたり、聞かれたくないのかな?』という具合に選手や監督さんの特徴を把握するように努めています。

――手応えを感じたインタビューはありますか?

インタビューには正解がないんです。何を質問しても、『はい、そうですね』としか返って来ず、明らかに怒っている監督の表情を見せるだけなのが正解である場合もあります。

そもそもサッカー自体にも“答え”がないと思います。同じプレーでも監督さんによっても違いますし、チーム状況によっても捉え方が全く異なる場合も出てくると思います。

私はインタビュー対象となる相手、チーム状況によって質問の内容や聞き方を変えるようにしています。質問自体は自分で感じた部分をつけ加えるようにはしていますが、なるべくシンプルに聞くように気をつけています。

だからこそ、練習場に伺って普段からしっかりとコミュニケーションをとって関係性を作っておくことが大事だと思います。選手達は練習場で試合のための練習をしているように、それが私にとっても試合のための練習なのかもしれませんね。

それでも終わってからはいつも、『あの時、他のことを聞いたら良かった』、『もう少し踏み込んだら良かった』などと反省の毎日ですね。