あえてアメリカへのサッカー留学を薦める理由

――中村さんが考えるアメリカにサッカー留学するメリットを聞かせて下さい。

一番の魅力は、充実した施設と多くの人に開かれた奨学金制度だと思います。日本では、ごく一部の人しか奨学金と縁がないイメージが強いと思うのですが、アメリカの大学は学校の予算規模が大きいので、世界中の国々から特待生を取る文化があるんです。

最初は「サッカーをするのに何でアメリカなの?」と言われることは多かったですし、ひどいときには「騙そうとしているんじゃないか?」と思われることもありました。

そんな時には、得意なサッカーで奨学金を受け取りながら、勉学に励むことができることを丁寧に伝えて、その後のキャリアの可能性を伝えるようにしています。

――株式会社WithYouの留学事業のこだわりを聞かせて下さい。

現在はひと学年あたり150名程度の選手をサポートさせていただいておりますが、一番の特徴は「サッカー人生だけを追っていない」ところにあると思います。

もし、サッカー選手として欧州のリーグでプレー出来るのならば、もちろんそちらの方がいいと思うんですけど、必ずしも全員がプロのサッカー選手になれるわけではありません。

僕がJリーガーとして過ごしていた日々を振り返ると、とにかく毎日サッカーばかりで「もう少し視野を広げればよかった……」と引退後に気付かされる部分がたくさんありました。

僕としては、サッカーを軸にしながらも、その後の人生をコーディネートできるような事業を作っていきたいという思いがあります。

――事業を立ち上げて10年ほど経っていますが、留学後の皆さんはどのようなキャリアを歩んでいますか?

プロ選手としてキャリアを歩んでいる選手もいますが、選手としてのキャリアを選ばなかった方々もさまざまなフィールドで英語を生かしながら活躍してくれています。

最近では、世界的に有数の偏差値を誇るカリフォルニア大学バークレー校にサッカー推薦入学後、在学中にドイツでプロ契約を結んで大学をオンラインに切り替えて「プロ選手+名門大学生」の二足の草鞋を継続している選手や、世界トップのハーバード大学で最先端のコンピューターサイエンスを学びながらプロを目指している選手もいます。

他にも、プロの道を選ばなくても、スポーツメーカーや現地の広告代理店に内定をもらったりと、その後の道は多岐に渡ります。慣れない異国の地で過ごした経験や、体育会の人材が英語を磨くことで、就職活動の武器になるものを自然と手に入れていて、さまざまなフィールドで活躍してくれています。

――株式会社WithYouの事業の強みはどこにあるのでしょう?

大学との強いコネクションや、試合分析を元にしたスカウティング力かなと思います。アメリカの大学が行っているサッカーの試合を、10年に渡って欠かさずに見るようにしてきたので、そこで培ったさまざまな情報や知識は誰にも真似ができないと思います。

かなりの時間をかけて成り立たせているビジネスなので、参入障壁が低いように見えて、真似することは難しい事業モデルだという自負もあるんです。

それと最近は、アメリカに日本人選手を送るだけではなく、現地の指導者の皆さんに日本のサッカー文化をより深く理解してもらう活動も積極的に行っているんです。

海外の多くの国はクラブチームの文化なので、「青森山田高校や静岡学園といった高校には、トップレベルの優れた選手たちがいるに技術に優れた選手たちがいる」と話しても、指導者にはあまり信じてもらえなかったりする。

なので最近は、アメリカの監督が来日した時に、国立競技場で行われる高校サッカー選手権の決勝を現地で実際に見てもらったり、日本のサッカー文化を理解してもらう活動にも力を入れているんですよ。

来日した指導者の皆さんは、満員に近い国立競技場で高校サッカーの決勝戦が行われていること自体に大変驚かれるコーチが多いのですが、僕らも決勝の熱狂ぶりを伝えることを毎年楽しみにしているんです。すでにコーチたちから来年1月、2月のトライアウト来日希望も続々と届いていますよ。