[第103回全国高校サッカー選手権大会1回戦、矢板中央高(栃木県代表)2-1岡山学芸館高(岡山県代表)、29日、千葉・フクダ電子アリーナ]
1回戦が29日に関東圏各地で行われ、矢板中央高が岡山学芸館高を2-1で下し、2回戦へ進出した。
この試合で先発出場した矢板中央高FW堀内凰希(こおき、3年、AC長野パルセイロU-15)は身長157センチと両軍の中で最も小柄だが、体格差を感じさせない力強いプレーで攻撃をけん引。後半38分には決勝点となる2得点目を奪ってチームを勝利に導いた。
逆境をはねけてきた矢板の背番号10
長野の下部組織で足元の技術を磨いた堀内は同クラブのU-18に昇格できるチャンスがあったが、より厳しい環境を自ら志願。中学卒業後は悲願の選手権初優勝を目指す赤黒イレブンの一員となった。
「(長野から)外に出て、プリンスリーグ(高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ)で挑戦したかった。みんなからは(矢板中央高では試合に)出られないと言われていたので、ここで活躍して『俺はここまでうまくなったぞ』という気持ちがありました」と反骨精神がエネルギーになっている。
両軍で最低身長の背番号10は、立ち上がりからドリブル突破で相手を翻ろう。身体をぶつけられても倒れないフィジカルはこの3年間で培われた。
身長というディスアドバンテージを感じさせない堀内は「ぶつけられても耐えられるように、3年間ずっと意識して身体を作ってきました」と毎週月曜日の休みを利用して励んでいたウェイトトレーニングの成果を明かした。
これまで堅守速攻で成果を挙げてきた矢板中央高だったが、この日は攻撃的なサッカーを披露。スリーバックを採用し、前線に厚みを持たせると、イレブンは堀内を中心に波状攻撃を仕掛けた。
後半17分にはMF平野巧(たくみ、2年‐FC Gois)が左サイドからドリブル突破を開始すると、二人、三人と交わし、そのまま右足でシュート。ボックス外から放たれたコントロールショットは放物線を描きながらゴール右側へ吸い込まれた。
先制点を記録した矢板中央高は同38分に追加点を奪取。右サイドから中に切り込んできたDF永井健慎(2年、大宮アルディージャU15)のドリブルは相手DFに阻まれるも、ボックス内中央で待ち構えていた堀内がこぼれ球にいち早く反応。右足から放たれたシュートはゴール右に突き刺さった。
矢板中央高は試合終了間際に直接フリーキックから1得点を返されるも、試合は2-1で終了。エースの得点が決勝点となり、2回戦へ進出した。
矢板中央高の高橋健二監督から、選手権の栃木県予選後に背番号10を正式に任されたという堀内は、「『やってやるぞ』という気持ちでした。1試合1得点をマストで決めていきたいです。絶対に結果を残し続けたい」と自身の選手権初得点を喜びつつも、すぐさま「でも前半にシュートを外してしまいました。ドリブルは自分の武器ですが、きょうは出し切れなかったので、2回戦ではもっと生かしていきたいです」と反省を糧にさらなる飛躍を誓った。
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「小さい子どもたちの夢や希望になりたいと思っていますし、日本代表に入っていけるような選手になりたいです」と選手権の活躍の先にある目標を高らかに掲げた背番号10。小さい身体に詰まった特大のエネルギーが大舞台で爆発する。
(取材・文・写真 浅野凜太郎)