06年の夏、リーグの主役は間違いなくジョゼ・モウリーニョのチェルシーであった。ジョン・テリーとフランク・ランパードを中心であったチームが新たに加えたスカッドは、アンドリー・シェフチェンコとミヒャエル・バラックであった。特に前者はロマン・アブラモヴィッチの独断と言われているが、彼らは共にミラン、バイエルンを象徴するスーパースターであった。

しかし私がなによりも忘れられないのは、カルロス・テ ベスとハビエル・マスケラーノがウェストハム・ユナイテッドにやって来たことだった。彼らのバックにはメディア・スポーツ・インヴェストメント社という企業が付いていて、彼らの保有権はその企業が保有していたのだ。それは、ウェストハムは移籍金を支払わない代わりに、彼らが出場可能な状態である限りスタメンで起用する。年棒の半額しか支払わないが、2人の“代理母”として、次の移籍先が見つかるまで彼をチームに置く、という全く新しい条件での移籍であった。若く有望なアルゼンチン人選手の保有権を企業が買い取り、イングランドのクラブとの交渉で利益を出した。この事実は私にとって相当なショックであり、同時に“商品”のような扱いで海を渡ったこの2選手の移籍にプレミアリーグの見据えるマーケットの展望を見た。

今季のリーグ戦を制したマンチェスター・シティ、彼らのスタータースカッドにおけるイングランド人はジョー・ハートただ一人だろう。リーグ全体を見渡しても、「プレミアリーグ」という見出しを飾れるプレーヤーは、セルヒオ・アグエロや、ルイス・スアレス、ヤヤ・トゥレであり、ヴァンサン・コンパニ、メスト・エジル、エデン・アザール、ロビン・ファン・ペルシー…その外国人軍団に割って入れるのはウェイン・ルーニー、そしてかろうじてスティーヴン・ジェラード、レイトン・ベインズくらいだろう。私の大好きなアダム・ララーナは今季のベストイレブンに選出されたが、私は公平に見てダビド・シルバこそ、そのポジションに相応しかったと感じている。イギリスにおけるチャビ・エルナンデスやアンドレス・イニエスタは、セルヒオ・ラモスは、マリオ・ゲッツェ、マルコ・ロイス、フィリップ・ラームはどこに行ってしまったのか。アラン・シアラーやマイケル・オーウェン、デイヴィッド・ベッカムの座が上手く継承されているとは言い難く、ギャレス・ベイルの活躍を見るには、イギリス海峡を渡る必要があるのが現実である。

ファーディナンドの言葉を思い出そう、プレミアリーグがとてつもない拡大を見せた反面、“イングランドフットボールの発展”は進んでいるのだろうか?アーロン・レノンやジェームス・ミルナーは、キャリアのピークと言われる年齢を越えようとしている。アーロン・ラムジーとジャック・ウィルシャーは、その類まれな才能を爆発させる時であり、ラーヒム・スターリング、ルーク・ショー、ロス・バークリーに、私はなんとしても世界を代表するスターになってもらいたい。