デル・ピエロ・ゾーン

そんなデル・ピエロの代名詞といえば、なんといっても「デル・ピエロ・ゾーン」である。

ユーヴェで通算208得点を記録した彼であるが、特にゴール前左45度を得意の角度としており、そのエリアのことを人々はそのように呼んだ。

右足のインフロントから放たれたシュートが、美しい弧を描いてゴールに吸い込まれていくシーンは誰もがよく見たものだ。

これは利き足と反対サイドに選手を配置する昨今では決して珍しくない。サイドから内へ切れ込み、得意の足でシュートを放つことができるからだ。

ただ、かつてはサイドであれば縦に強い、いわゆる「ウィング」のような選手が重宝される時代であった。だからこそ、デル・ピエロは(ウィングではなかったものの)そのエリアおよびそこからのシュートに個人名が付けられたのである。

メッシやロナウド、ネイマールといった現サッカー界を牽引するスーパースターさえ、彼らの名前が付いたようなプレーはない。それだけデル・ピエロが与えたインパクトは大きかったということだろう。

こうして改めて振り返ると、デル・ピエロは過渡期に生まれ、ファンタジスタという前時代的な属性を持ちながら、近代サッカーの“走り”となった選手と言えるのかもしれない。