「世界こんなところに日本人女子サッカー選手」

試合中、ピッチサイドで撮影している私の周りでは、おそらくHB Køgeのアカデミーでプレーしている少女たちがボールガールを務めていた。彼女たちの肌の色は実に様々で、中東系も南アジア系もアフリカ系も、ここではみな一緒にデンマーク語でおしゃべりしている。移民政策が進んでいる北欧らしい光景だ。

ピッチ内で戦う選手たちも、スパルタクもこの時点で外国人選手が5人(アメリカから2人、カナダ、ブラジル、ガーナ)、カナダ国籍のアジア系選手も所属しており、さらにチームフォトグラファーの私はなぜか日本人、チーム内は非常に多国籍な雰囲気だ。

対戦相手のKuPS Kuopioにも、さまざまなルーツの選手が所属しているようで、それは欧州の国際大会の場ではなんら珍しいことではない。そんなわけで、対戦相手の交代選手として黒﨑優香選手がピッチに入ってきたときも、実は日本人選手だとは全く気付かないままだった…。

言い訳をさせてもらえるならば、私は自分のチームの歴史的瞬間を絶対に取り逃してはいけないと、そのことばかり考えていていっぱいいっぱいだったので…。

フィンランドのKuPS Kuopio所属、黒﨑優香選手。藤枝順心高卒業後にアメリカの大学に進み、2021年から欧州でプレーしている。

試合後、チームと一緒にホテルに戻って食事。食後は歌を歌いながら、選手たちはコペンハーゲンの海辺へ散歩に出かけていった。チームフォトグラファーの私は一刻も早く試合画像を各方面に提供しなければならないので、大量に撮影した写真の選別作業に入る。

一通り選別してSNSにシェアすると、美しい選手たちから「いやこの写真は太って見えるから別のにして」などなどクレームが入ったりもする(笑)。

セルビアサッカー協会公式SNSに掲載された画像

おこがましい話だが、「男子選手であっても女子選手であっても彼らをいかに美しく撮るか」という意識については、私は業界内でも高い方だと思っていた。しかし彼女たちの美意識は私を遙かに上回る。美しい選手たちのクレームには丁寧に対応しなければならない(笑)。

女子サッカーを高める「世界で戦う意識」

セルビア国内で男子チームのリーグ戦を撮影するとき、私はあまりに異質な存在であり、すぐにその場にいる全員に認識されてしまう(今のところそれはデメリットよりもメリットの方が多いということは注記しておきたい)。

一方で女子CLという国際大会の場では、アジア系の女性フォトグラファーの存在はほぼ違和感なく受け入れられている。この感覚は現地で経験してはじめて理解できるものだった。

私自身はフォトグラファーとしてチームに関わっているので、選手の立場からはまた違った意見があるかもしれない。

しかし、今後ヨーロッパ各国でプレーする日本人選手がもっと増えれば、サッカーそのものの経験としてはもちろん、ピッチ外での全ての国際感覚も含めて、世界で戦うという意識の向上に繫がる。そして、それは日本女子サッカー界の今後にも貢献することになるのではないだろうか。

超逆光の中、チームのはじけるような笑顔とは裏腹に、絶対に撮影失敗できないという緊張感。セルビアで最も権威が高いスポーツ専門紙Žurnalにカラーで大きく掲載された

予選ラウンド1の二回戦進出を決めたスパルタク、10月11日(水)日本時間22時からスウェーデンのローゼンゴード(FC ROSENGÅRD)とホームのセルビアで対戦する。

ローゼンゴードには今シーズンから門脇真依選手が所属しており、こちらも楽しみだ。

【関連記事】ストイコヴィッチが身を置く、過酷すぎる“代表監督”の立場。「日本では許されるのかもしれないが」 衝撃の逆転負けを取材した

私は10月18日(水)にスウェーデンのマルメで行われる2ndレグに、スパルタクのチームフォトグラファーとして、日本から弾丸で撮影に行くことになっている。

【厳選Qoly】なぜ?日本代表、2024年に一度も呼ばれなかった5名

大谷翔平より稼ぐ5人のサッカー選手