Jで活躍できない理由、それは…
ではなぜ彼がJリーグで活躍できていないのだろうか?それは誤解を恐れずにいえばズバリ、“上手くない”からだ。
小柄で「10番」の攻撃的MFというと、サッカーファンであれば普通に「テクニシャン」であることを想像するだろう。中島は確かにドリブルの際にはメッシを彷彿とさせるような場面もある。ただ必ずしも天才肌の感性や技術を持つわけではなく、全体を把握する能力に欠けるがゆえ選択にミスが多く、パスも簡単に引っ掛けてしまうのである。
若くして才能を評価され、個の能力に執着したがために周囲の“生かし方”を学ぶ機会を逸したのだろうか。
ただ一方で他の選手にはない大きな武器が彼にはある。驚異的な運動量と、160cmそこそこの自分より一回りも二回りも大きな相手に決して怯まず、向かっていけるところである。
準々決勝イラン戦は彼の特徴が良い部分も悪い部分も含めて全て出たと言える。
「90分では良いプレーができなかったですし、ほぼ何もしていなかった」
本人が口にした試合後の言葉であるが、90分の間には無謀に仕掛けたり、態勢が悪くなったところでパスを選択し奪われるというミスを連発した。しかし、決して失敗に下を向くことなく、相手の足が止まった延長戦にワールドクラスの2発を叩き込んだのである。
中島はポジションこそ左サイドに位置するが、その本質は「ゲームメイカー」でもなければ「チャンスメイカー」でもなく、粗削りながらも試合を決める一発の能力に優れた「点取り屋」であり、「ファイター」なのだ。
だがゴールという結果を残せていない現状、尖り切れていない彼が「協調」と「アベレージ」が重視されがちのJリーグにおいて非常に扱い難い存在となっているのであろう。