この練習参加を機に、プロ内定を勝ち取った。「大学の試合も出場していないし、選抜にも選ばれていない自分が逆にいいのかなと思いました。ケガした分、ご褒美をくれたのかな」と粟野。プロ内定の吉報は喜びよりも驚きが大きかった。「いままで両親がやってきたサポートが大きかったです。プロになれて、まず一つ恩返しができて良かったです」と笑みをこぼした。仙台大サッカー部では12年連続でのJリーガー輩出となった。

福島ユナイテッドFCで、プロとして

周囲から祝福を受けた粟野だが、「試合に出てなかったからどれだけやれるかというイメージができてなかったです。自分の物差しがなかった。とにかく大学は苦しい時間が多くて、大学の試合に出ていなかったから(プロから)声がかかるはずがないと。どこかに練習参加してプロになろうってメンタルではありませんでした」と吐露。しかし、福島ユナイテッドは粟野の実力を正当に評価していた。

福島の玉手淳一強化部長は「仙台大学と良好な関係を築いている中で、3月の練習試合に練習参加してもらいました。その際に、ボランチでプレーし、プレー回数も多くとにかく量も動け、繰り返してプレーできる所が気になり、その後も練習参加してもらいました。チームの中でも違うアクセントになれるプレーヤーとして評価し、監督、現場スタッフと話し合い、来季加入内定と特別指定選手の登録を決めました」と獲得の経緯を説明。

正確なポジショニングと足下の技術の高さを駆使したチャンスメイクに、危険と分かればプレーをやり直す優れた判断力。福島の慧眼は才能を見逃さなかった。期待の戦力として大学生ながらチームに迎い入れられた。

チームは年齢層が近い選手が多かったことから、すぐに溶け込めた。ただ大学サッカーとプロサッカーの違いも体感した。「パスコン(パス&コントロール)から緊張感があって、試合の本気度も違いました。お金をもらってサッカーをしますから、より意識を高くしてプレーしないといけない」と粟野。そして合流してすぐにプロデビューを果たした。昨年4月29日のアウェー愛媛戦で先発出場した。

雨の中、行われた試合。背番号38番は「準備はしていました。愛媛はすごいチームだから緊張していたけど、ボールに触ったらきょうは行けそうだなと思えて楽しかったです」と強心臓のプレーを披露。ボールが渡れば素早く前線につなぎ、リズムを取りながらパスを全体に紡ぐようにしてゲームを活性化させていく。

「高校のときにサテライトでプレーしたこともありますが、プロとしてスタジアムでピッチに立てた。心地良かったです」

チームは引き分けに終わるも、大きな成果を手にした。