引退と、「心の闇」

ルーカス・ニールはイングランド、トルコ、UAE、そして日本で長くサッカー選手としてのキャリアを重ねてきた。

その間には4000万ドル(およそ44.2億円)以上の給与を受け取ったとされているが、2014年にピッチを離れてからわずか2年で破産宣告を受けるという結末を迎えた。

そのニュースはオーストラリアのサッカーファンだけでなく世界中に驚きを与えた。そして誰もがこう聞いた。『彼を最後に見たのはいつだ?』と。

多くは2015年アジアカップで大使を務めたときだろう。ただ、彼はそれ以前の半年間組織委員会と接触しておらず、大会終了後にSoccerEX会議に出た後、また姿を消した。

ある元チームメイトがシドニーのナイキストアで顔を合わせたと話しているが、表舞台に出てくることはなかった。

そして、彼が所有しているボルトンの家は既に販売されており、今となってはどこに住んでいるかすらも分からない。

彼に何が起こったのか? ロビー・スレイターはこう語っているという。

ロビー・スレイター

「引退するサッカー選手には、信じられないほどに大きなリストがあるのだ。『失うもの』のリストが。

ライフスタイル、お金、賞賛、アドレナリンの噴出、観客の声、そしてドレッシングルームでのチームスピリットだ。それらを失うのは、心に巨大な空白を作り出すのだ。

鍵は、とにかく早く動き、新しい人生を受け入れることなんだ。ところが、一定の割合でそうすることができない人物もいる。

そして、問題を整理するために――酒を飲み、ギャンブルに溺れ、結婚生活は破綻していく。

私はそれを軽く話すことは出来ない。しかし、皆常に落ち込んだ形でキャリアを終えるのだ」

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